August 18, 2023

DX推進に必要な技術と活用事例を詳しく解説

DXの浸透に伴い、企業は新しいテクノロジーを活用して競争力を高める必要があります。DXに必要な技術は多岐にわたりますが、その中でも特に重要な技術と業種別の活用事例などを紹介します。

DX推進において重要な技術

以下に紹介する技術は、DXを推進するために不可欠であり、企業がこれらの技術を適切に組み合わせて活用することで、業務効率化、革新的サービスの提供、市場競争力の維持・強化などが可能となります。

1. 人工知能(AI)と機械学習

DXに必要な各種技術の中でも、AIは主要なカギを握っています。AIは人間の知能を模倣し、情報処理能力を超越する技術であり、多岐にわたる業務に活用されています。以下に、AIがDX推進に果たす役割ついて見ていきましょう。

【AIが果たす役割と活用例】

(1) 予測・分析

 AIは膨大なデータを学習し、特徴を抽出して予測や分析を行う能力を持っています。新たなデータを読み込むことで、予測精度を向上させます。

小売業では売上予測や在庫最適化にAIを活用されたり、市場トレンドの予測や顧客の購買行動の分析に活用もされます。

(2) 最適化

 AIは異なる目的や制約を考慮して最適な選択肢を導き出し、意思決定を支援します。

製造業では生産ラインの最適化や資材調達の最適化にAIを活用し、効率とコスト削減を実現しています。また、さまざまな業界で、棚割最適化や運転計画の最適化、プロモーション戦略の最適化などに応用されています。

(3) 画像解析

 AIは画像解析技術と組み合わせて、画像の分類や検出を行います。ディープラーニングによる学習により、物体の特徴や特性をより正確に把握できます。顔認識や異常検知などで活用されます。

自動車業界では自動運転車のセンサーデータを解析して周囲の状況を把握し、安全な運転を支援します。医療業界ではX線画像の解析にAIを導入し、病変の早期発見を支援します。製造業では製品の欠陥検出や安全監視に活用されています。

(4) 音声解析

AIは音声解析にも応用され、話し声を文字に変換する能力を持っています。コールセンターでは音声解析により顧客の声から感情や要望を把握し、カスタマーサポートの向上に貢献しています。

また、言語翻訳アプリケーションもAI技術を利用しています。医療業界では、診療記録の自動化や診断支援に活用されています。スマートフォンの音声アシスタントやスマートスピーカーの技術により、人間とのコミュニケーションを支援します。

(5) 文章解析

AIは文章を解析し、情報の把握や分類、ラベリングを行います。文書の要約や業界固有の名詞認識など、文章処理を効率化します。

金融業界では不正検出にAIを活用し、怪しい取引を自動的に検出して防ぎます。また、法律業界では契約書の分析や法律文書の要約にAIを導入して効率化を図っています。

(6) ロボティクス

AIと連携することで、ロボット工学が進化します。センサーデータの収集とAIの処理を組み合わせ、汎用物体把持や秤量などの作業を効率的に行います。

自動車業界では自動運転技術などに活用され、製造業では産業ロボットの制御にも活用されています。農業業界ではドローンにAIを搭載して作物の成長状況をモニタリングし、効果的な農作業計画を立てる例があります。また、物流センターでは自動倉庫ロボットがAIによって荷物の取り扱いを最適化しています。

2. 生成AI(Generative AI)

AI技術の中でも注目を集めているのが生成AI(Generative AI)です。この技術は、コンピュータが既存のデータセットから学習し、新たなコンテンツやデザインを生成する能力を持つものです。

文章、画像、音楽などの創造的な要素をAIが生成し、新しいアイデアやコンセプトの発展を支援するため、クリエイティブな領域に大きな可能性をもたらしています。企業は生成AIを活用して革新的なプロジェクトを推進することが可能です。

【生成AIが果たす役割と活用例】

生成AIは、幅広い領域で活用することが可能です。以下にいくつかの具体例を紹介します。

(1) 文章生成

生成AIは文章の生成にも活用されます。記事、物語、詩などの自動生成が行われ、ブログやニュースサイトなどでコンテンツの生成に使用されています。特定のトピックに関する文章を自動的に生成することで、コンテンツ制作の効率を向上させることができます。

対話型AIチャットサービス「ChatGPT」は、生成AIの実用的な応用例として挙げられます。ChatGPTは、ユーザーと自然な対話を行いながら文章を生成する能力を持ち、カスタマーサポートからクリエイティブな執筆まで幅広い領域で活用されています。

(2) 画像生成と修復

生成AIは、写真の修復や画像の生成に使用されます。古い写真の劣化を修復したり、写真から新しい視覚的な要素を生成する際に活用されます。また、デザイナーやクリエイターは生成AIを使用して新しいデザインやアートワークを生成し、クリエイティビティを刺激します。

 画像生成AIサービス「Stable Diffusion」などの画像生成AIサービスは、生成AIを用いて画像を生成する例です。この手法は、リアルな画像を生成する際に、ディープラーニングの手法を活用し、高品質な画像を生成することが可能となりました。この技術は、デザインや映像制作などの分野で大きな影響を与えています。

(3) 音楽生成

音楽の作曲にも生成AIが用いられます。既存の楽曲のパターンを学習し、新しいメロディーやハーモニーを生成することが可能です。これにより、新しい楽曲の制作やバリエーションの生成が容易になります。

(4) 映像生成

動画の生成や編集にも生成AIが活用されます。既存の映像から新しいシーンやエフェクトを生成したり、映画の予告編や広告の制作に使用されます。また、アニメーション制作などでも活用されています。

【企業における生成AIの応用範囲】

企業における生成AIの応用範囲は多岐にわたります。企業にとって生成AIは、効率を向上させたり、新たな価値を創造したりするなど、ビジネスプロセスの革新に寄与する重要なツールとなるでしょう。以下に、その具体的な応用例を紹介します。

(1) 製品デザインとイノベーション

企業は生成AIを使用して、新しい製品のデザインを生成できる可能性があります。特定の要求事項やデザイン指針を入力することで、AIが複数のデザインバリエーションを生成します。これにより、製品デザイン制作の効率性向上や革新的デザインを実現するなど、新たな製品の開発や競争力の向上が可能となります。

(2) 広告・マーケティング

企業は生成AIを使用して、広告やマーケティングコンテンツを生成することが可能です。商品の特徴や効果をもとにAIが広告文やキャッチコピーを作成し、ターゲットユーザーに合った魅力的なメッセージを制作します。

(3) コンテンツ生成

企業は生成AIを活用して、Webコンテンツや記事を自動生成することが可能です。特定のトピックやキーワードに基づいてAIが文章を生成し、コンテンツ制作の効率化とスケーリングを実現します。

(4) 顧客対応とサポート

企業は生成AIを活用して、使用して顧客対応を向上させること可能です。対話型AIチャットサービス(例:ChatGPTなど)を導入することで、顧客の質問や問題に迅速に対応するとともに、24時間体制でのサポートを提供することが可能になります。

(5) 製造プロセスの最適化

製造業では、生成AIを使用して製造プロセスを最適化すること可能です。材料や設計条件などを入力し、AIが最適なプロセスやパラメータを提案することで、製品の品質向上やコスト削減が実現可能です。

(6) 音楽・映像制作

エンターテインメント業界では、生成AIが音楽や映像の制作に活用されています。AIが既存の楽曲や映像を分析し、新たな要素やバリエーションを生成することで、クリエイターの創造性をサポートします。

(7) データ可視化

企業は生成AIを使用して、大量のデータを視覚的に表現すること可能です。AIがデータを解析し、インフォグラフィックやダッシュボードを生成することで、効果的にデータを可視化できます。

3. クラウド・コンピューティング

クラウドコンピューティングは、インターネットを介してオンデマンドでコンピュータリソースやサービスを提供する技術であり、企業が効率的にDXを実現するための基盤を提供します。クラウドを活用することで、スケーラビリティや柔軟性を実現し、ITインフラの効率を向上させることができます。クラウド上でアプリケーションを展開することで、迅速な開発と運用が可能となります。

【クラウドコンピューティングのサービスモデル】

  • SaaS(Software as a Service)
  • SaaSは、ソフトウェアをオンデマンドで提供するモデルです。企業は必要なアプリケーションを自社のデバイスから利用できるため、専用のソフトウェアを購入したりインストールしたりする必要がありません。例えば、オフィススイートやCRMソフトウェアなどがSaaSとして提供され、企業はこれらのアプリケーションを利用することで、業務効率の向上やコラボレーションの強化を図ることができます。

  • PaaS(Platform as a Service)
  • PaaSは、開発プラットフォームを提供するモデルであり、開発者はアプリケーションを構築・実行するための環境を利用できます。データベース、開発ツール、実行環境などがPaaSとして提供され、開発者はこれらのツールを使用してアプリケーションの開発・テスト・デプロイを行うことができます。PaaSを利用することで、アプリケーション開発のスピードを向上させ、効率的なデプロイが可能となります。

  • IaaS(Infrastructure as a Service)
  • IaaSは、インフラストラクチャを提供するモデルであり、サーバー、ストレージ、ネットワークなどの基盤リソースをクラウド上で利用できます。企業は必要なリソースを必要なだけ使用することができ、インフラストラクチャの運用・管理を簡素化することができます。これにより、新たなプロジェクトの開始やリソースの拡張が迅速に行えます。

    【クラウドコンピューティングを活用するメリット】

    企業はクラウドコンピューティングを活用することにより、以下のようなメリットを得ることができます。

    (1)スケーラビリティ

    クラウドコンピューティングは、需要に応じてリソースを拡張・縮小できるため、企業は必要なときに必要なだけリソースを利用できます。

    (2)柔軟性

    クラウド上でアプリケーションを実行するため、場所やデバイスに依存せずにアクセスできます。

    (3)コスト効率

    クラウドコンピューティングは、従量課金制を採用していることが多く、無駄なリソースの消費を抑えてコストを削減できます。

    (4)アップデートとメンテナンス

    SaaSでは、プロバイダー側でアプリケーションのアップデートやメンテナンスを行うため、常に最新バージョンを利用できます。

    【企業によるクラウドサービスの活用事例】

    これらのクラウドサービスモデルを組み合わせて、企業はDX推進に必要なソフトウェアやプラットフォーム、インフラストラクチャを効率的に利用し、ビジネスプロセスを改善できます。例えば、以下のような事例が考えられます。

    (1) アプリケーションの迅速な展開と拡張

    SaaSを活用することで、企業は必要なアプリケーションを素早く展開し、必要に応じて拡張することができます。例えば、顧客管理システムや会計ソフトウェアをSaaSとして導入することで、新規事業展開や急な需要増加にも柔軟に対応できます。

    (2) データ解析と予測

    PaaSを利用してデータベースや解析ツールを構築することで、ビッグデータの解析や予測モデルの構築が可能となります。企業は顧客の傾向や市場動向を把握し、戦略的な意思決定を行うことができます。

    (3) 新たなサービスの提供

    クラウド上でアプリケーションを開発し、SaaSとして提供することで、顧客に新たな価値を提供することができます。例えば、健康管理アプリやIoTデバイスと連携したサービスを提供する企業が増えています。

    (4) 柔軟なインフラストラクチャの運用

    IaaSを活用することで、企業は必要なハードウェアリソースをクラウド上で利用し、自社内でのインフラストラクチャ運用やメンテナンスの手間を軽減できます。特に、プロジェクトの進捗に合わせてリソースを調整できるのが利点です。

    (5) 環境のスケールアウトとインスタンス管理

    クラウド上の仮想マシンやコンテナを利用することで、アプリケーションの負荷に応じてスケールアウトやインスタンスの管理を行うことができます。これにより、ユーザー数やトラフィックの急増にも柔軟に対応できます。

    上記のように、企業のDX推進において、クラウドコンピューティングは重要な基盤となります。企業はSaaS、PaaS、IaaSなどのサービスモデルを組み合わせて、自身のニーズに合わせたクラウド戦略を構築し、ビジネスプロセスの効率化、新たなサービスの提供、アプリケーションの迅速な開発・展開などを実現し、競争力を高めて持続的なイノベーションを推進していくことが求められています。

    4. ビッグデータとアナリティクス

    ビッグデータ技術は、大量のデータから価値を抽出する手段を提供します。アナリティクスを通じて、データを解析し、トレンドやパターンを発見することができ、戦略的な意思決定を支援します。ビッグデータの活用は、顧客の行動理解や市場の洞察を高めます。

    【ビッグデータとは】

  • ビッグデータ(Big Data)
  • ビッグデータとは、通常のデータベース管理システムやデータ処理ツールでは取り扱いきれないほど巨大なデータセットを指します。ここには整理された情報だけでなく、テキスト、画像、音声、動画などの非整理データも含まれます。ビッグデータは「3V」(ボリューム、バラエティ、速度)として特徴づけられ、大量のデータ、多様なデータ形式、迅速な変動が挙げられます。

  • アナリティクス(Analytics)
  • アナリティクスとは、データを分析して傾向やパターンを把握し、価値ある情報や洞察を引き出すプロセスです。データを可視化し、統計的手法や機械学習、AIなどの技術を用いてデータを探索し、意味を導き出すことが含まれます。アナリティクスはビジネスインテリジェンス(BI)や予測分析、最適化などの用途に利用されます。

    【ビッグデータとアナリティクスの仕組み】

    ビッグデータの処理は従来のデータベース管理システムでは難しいため、分散処理フレームワーク(例:Hadoop、Spark)を使用して行われます。これらのフレームワークは複数のコンピュータノードを活用してデータを並列処理し、高速なデータ処理を実現します。

    アナリティクスでは、まずデータをクレンジングして不正確な情報や欠損データを除去します。その後、データを可視化ツールや統計分析、機械学習アルゴリズムなどを用いて分析します。予測分析や意思決定支援のために、過去のデータからパターンやトレンドを抽出し、将来の動向を予測する手法も利用されます。

    【ビジネスアナリティクス(BA)の手法・特徴・主なツール】

    以下のアナリティクス手法は、異なる側面からデータを分析し、問題の特定、将来の予測、意思決定の支援、プロセスの改善といった一連のビジネスの意思決定や改善に役立てることができます。

    (1) 記述的アナリティクス(Descriptive Analytics)

    • 目的:過去のデータから事象やパターンを理解し、状況を説明する。「何が起こったのか?」
    • 特徴:主に集計や可視化を用いてデータを分析し、要約統計やグラフなどを通じてデータの特性を可視化します。過去のトレンドやパフォーマンスを把握するために使用される。
    • ツール:Microsoft Power BI、Tableau、QlikViewなどのデータ可視化ツールが用いられる。

    (2) 診断的アナリティクス (Diagnostics Analytics)

    • 目的:過去のデータから特定の事象や現象の原因を分析し、問題の根本原因を理解する。
    • 特徴:データの分析を通じて、異常なパターンや変動を検出し、問題が発生した背後にある要因を特定する。これにより、過去の出来事を詳細に解剖し、問題解決への洞察を提供する。
    • ツール:Splunk、Microsoft Power BI、SAS Analytics、IBM Watson Analyticsなどのデータ分析ツールが使用される。

    (3) 予測的アナリティクス(Predictive Analytics)

    • 目的:過去のデータから未来の出来事や動向を予測する。「何が起こり得るか?」
    • 特徴:統計モデルや機械学習アルゴリズムを用いて、データのパターンやトレンドを分析し、将来の出来事を予測する。
    • ツール:Pythonのscikit-learn、R言語、IBM SPSS Modelerなどの予測分析ツールが利用される。

    (4) 規定的アナリティクス(Prescriptive Analytics)

    • 目的:データから最適な意思決定を支援し、行動に関するアドバイスを提供する。「どうすればいいのか?」
    • 特徴:最適化やシミュレーションなどの技術を用いて、さまざまなシナリオを評価し、最良の行動計画を提案する。
    • ツール:OptaPlanner、AnyLogic、Gurobiなどの最適化ツールが応用される。

    (5) プロセスマイニング(Process Mining)

    • 目的:ビジネスプロセスの実行と性能を分析し、効率化や改善の機会を特定する。
    • 特徴:イベントログからプロセスの実行状況を可視化。ボトルネックや過程の問題を洗い出す。
    • ツール:Celonis、Disco、ProMなどのプロセスマイニングツールが活用される。

    【企業におけるビッグデータとアナリティクスの活用事例】

    ビッグデータとアナリティクスの組み合わせは、企業にとって競争力を向上させるための重要なツールであり、DX推進において欠かせない要素です。データを正しく収集し、適切に分析・活用することで、新たなビジネスチャンスの発見や戦略の最適化が可能になります。

    (1) 製造業

    • 製造工程のデータを分析し、製品のアセンブリラインにおけるエラー率を特定し、効率を向上させる。
    • 製品の設計データと生産能力データを組み合わせて分析し、最適な製品ライン配置と生産計画を提案。
    • 生産設備のメンテナンスデータと故障履歴を結びつけて、メンテナンススケジュールの最適化を行う。

    (2) 金融業

    • 顧客の信用スコアと収入情報を組み合わせて、融資限度額や金利を個別に設定。
    • 顧客のローン返済履歴を分析して、リスクスコアや信用スコアを評価するためのデータを収集。
    • 取引データを解析して、特定の取引が不正行為である可能性を検出し、セキュリティ対策を強化。
    • 顧客の口座開設からローン申請までのプロセスを分析し、過程のボトルネックを特定。

    (3) 物流業

    • 輸送ルートの移動データを分析して、運送効率の向上や最適なルートの特定。
    • パッケージトラッキングデータを分析して、配送時間の正確性を向上させるアプローチを検討。
    • 配送遅延の履歴データを分析して、特定地域や天候による遅延の傾向を把握。

    (4) 小売業

    • 顧客の購買履歴を分析し、売れ筋商品や季節ごとの需要パターンを把握する。
    • 在庫量、購買データ、供給チェーン情報を統合して、最適な仕入れ量とタイミングを計画。
    • 在庫レベルと需要予測を組み合わせて、在庫の最適化と販売スケジュールを決定。
    • 購買履歴と顧客の属性データを結びつけて、最適なターゲティングを行うプロモーション戦略を提案。

    (5) 旅行・ホテル業

    • 客室予約データを分析して、ピーク時の予約状況や滞在期間の傾向を把握。
    • 訪問者数と天候データを結びつけて、観光地のピーク時やオフシーズンを分析。
    • オンラインレビューと宿泊データを連携して、顧客満足度と宿泊体験の関連を解析。
    • 旅行パッケージの予約履歴と市場トレンドを組み合わせて、需要の高い商品を特定。

    (6) ゲーム・エンターテインメント業

    • 映画のプロモーションキャンペーンのデータとソーシャルメディアの反応を分析し、興行収入の予測を行う。
    • 音楽ストリーミングデータとユーザー評価を組み合わせて、人気楽曲の特徴を分析。
    • ゲームプレイの行動データとプレイヤーのフィードバックを結びつけて、新機能やアップデートの効果を予測する。

    以上のように、企業はこれらのアナリティクスの方法とツールを組み合わせて、データを有効活用するデータドリブンの戦略を展開することで、データ駆動型イノベーションを創出し、顧客価値の向上、事業成長につなげることが可能になります。

    5. IoT

    IoTは、企業のDX化による、競争力強化、効率化、イノベーションの推進において不可欠な存在となっています。IoTの普及により、ビジネスはよりデータ駆動型の戦略を展開し、迅速かつ的確な意思決定を行えるようになります。

    【IoTとは】

    IoT(Internet of Things)とは、従来はインターネットに接続されていなかったさまざまなセンサー機器や駆動装置、電子機器、住宅、建物、家電製品、自動車などの多様な物体やデバイスがネットを通じてインターネットを通じて相互に接続され、データの収集、共有、制御が可能となる革新的なテクノロジーです。

    これにより、日常的な物体や設備が「スマートデバイス」として振る舞い、デジタルネットワークを介してリアルタイムで情報を交換する能力を持つようになります。

    企業はセンサーやアクチュエーターを用いてデバイスをインターネットに接続し、物理世界の情報をデータとして収集し、分析、活用することが可能になります。これにより、業務プロセスの最適化、効率化、顧客体験の向上が実現します。

    【IoTの仕組み】

    IoTの仕組みは、様々な物体やデバイスがインターネットを介して相互に通信し、データをやり取りするプロセスです。これにより、日常の物体が「スマートデバイス」として振る舞い、リアルタイムで情報を共有する能力を獲得します。

    IoTは、以下のようなステップで成り立っています。

    (1) センサーとアクチュエーターの装備

    物体やデバイスには、温度、湿度、位置などの情報を収集するセンサーや、動作や制御を行うアクチュエーターが組み込まれています。

    (2) データの収集

    センサーが物体の状態や環境のデータを定期的に収集します。例えば、自動車のエンジンセンサーがエンジンの温度や回転数を監視します。

    (3) データの送信

    収集したデータは、インターネットを介してクラウドやデータセンターに送信されます。ここでデータは保存、処理、分析されます。

    (4) データの処理と分析

    クラウドやデータセンターでデータは処理され、特定のパターンや傾向が分析されます。機械学習やAI技術も活用され、データから有益な情報を引き出します。

    (5) 意思決定と制御

    分析結果に基づいて意思決定が行われます。例えば、工場の機械に異常が検出された場合、自動的にメンテナンスが予定されたり、遠隔から制御が行われたりします。

    (6) データの表示と通知

    分析結果や制御結果は、ユーザーにわかりやすい形で表示されたり、通知されたりします。スマートフォンアプリやダッシュボードを通じて、リアルタイムの情報が提供されます。

    このようなIoTの仕組みによって、物体がデータを生成し、それがリアルタイムで収集・処理され、有益な情報や意思決定が生み出されるプロセスが実現されます。

    【企業によるIoTの活用事例】

    企業によるIoTの応用範囲は広範であり、さまざまな業界で活用されています。以下にいくつかの活用例を紹介します。

    (1) 製造業

    • スマートファクトリー
      工場内の機械やセンサーがリアルタイムでデータを収集し、生産ラインの効率を最適化。生産スケジュールの自動調整や故障予測を実現。
    • 品質管理
      製品のセンサーデータを分析して製品の品質をモニタリング。異常なパラメータが検出された場合に自動的にアラートを発信し、品質の向上に寄与。
    • リモートモニタリング
      製造設備のセンサーデータをオンラインでモニタリング。遠隔からのデータ収集により、メンテナンススケジュールを最適化し停止時間を減少。

    (2) 小売業

    • スマートショッピング 顧客のスマートフォンから収集した位置情報と過去の購買履歴をもとに、顧客に対して個別のプロモーションやオファーを提供。
    • 無人コンビニ センサーとカメラを使用して、顧客が商品を取ると自動的に決済が行われる無人コンビニを実現。在庫の監視や商品補充も自動化。
    • 顧客行動分析 店内のセンサーデータとカメラ画像から、顧客の動線や滞在時間を分析し、陳列やディスプレイを最適化して店内効果を向上。

    (3) 医療業

    • ウェアラブルデバイス
      患者が身に着けるウェアラブルデバイスからバイタルデータを収集し、医師が遠隔で患者の健康状態をモニタリングし、早期の健康問題を検知。
    • スマート医療機器
      医療機器に組み込まれたセンサーが患者のデータを収集し、自動的に治療計画を調整。例えば、糖尿病患者向けのインシュリンポンプなど。
    • 手術支援システム
      手術室内のセンサーやカメラが手術の進行状況をモニタリングし、外科医にリアルタイムで情報を提供。手術の精度向上を支援。

    (4) 交通・物流業

    • スマート交通
      道路上のセンサーやカメラからのデータをもとに、交通渋滞の予測と回避ルートの提案。都市の交通状況を最適化。
    • ドローンデリバリー
      ドローンを使用して荷物の運搬や配達を行い、交通渋滞を避けて迅速な配送を実現。
    • フリート管理
      車両のGPSデータと運転データをモニタリングし、運転者の運転習慣を評価して燃料効率や安全性を向上。

    (5) 農業

    • スマート農業
      土壌センサーや気象観測デバイスを使用して、農作物の成長状態と気象情報を組み合わせて、適切な水やりや施肥を行う。
    • 農作業自動化
      農地に設置されたトラクターや収穫機のセンサーデータを活用し、農作業を自動化して効率的に行う。
    • 精密農業
      GPSやセンサーを使用して、畑の異常箇所や肥沃度の違いを検出し、必要な処置を行い収穫量を最大化。

    (6) エネルギー業

    • スマートメータリング
      家庭やビルに設置されたスマートメーターが電力使用データを収集し、消費者がエネルギーを効率的に使用するための情報を提供。
    • エネルギーモニタリング
      工場や施設のエネルギー消費データをリアルタイムで収集し、無駄なエネルギー使用を特定して削減策を提案。
    • 再生可能エネルギー最適化
      太陽光パネルや風力タービンのセンサーデータを活用し、発電効率を最大化して再生可能エネルギーの利用を推進。

    これらは、各業界におけるIoTの活用事例の一部です。企業はIoTを通じてデータの収集と分析を進化させ、効率の向上や新たなビジネスモデルの創出に取り組んでいます。

    6. ブロックチェーン

    ブロックチェーン技術は、デジタルトランスフォーメーションにおいて信頼性と透明性を確保するために活用されます。中央集権的な管理を排除し、分散型のデータベースで取引や情報の正確性を保証し、不正や改ざんを防止します。これにより、業界間の信頼を築き、効率的なプロセスと新たなビジネスモデルの構築が可能となります。

    【ブロックチェーンとは】

    ブロックチェーンとは、暗号技術を用いて取引履歴(ブロック)を1本の鎖(チェーン)のようにつなげ、正確な取引情報を永続的に保存する革新的な技術です。また、ブロックチェーンは分散型であり、参加者間で合意形成が行われるため、中央機関が不要であり、セキュリティレベルが非常に高い特徴があります。この仕組みにより、取引データが改ざんや破壊から守られ、信頼性の高い取引履歴を実現します。

    現在、暗号資産(仮想通貨)の取引のほか、契約書、金融やオンラインサービスでの安全な認証、商品トレーサビリティなど、さまざまな分野で活用されています。

    【ブロックチェーンの仕組み・特徴】

    ブロックチェーンは、分散型のデジタル台帳技術であり、データの安全性、信頼性、透明性を確保する革新的な仕組みです。その基本的な仕組みは以下の通りです。

    (1) 分散化とノード

    ブロックチェーンは中央機関を必要とせず、参加者のノードがデータベースを分散的に保持します。これにより、取引情報やデータが一箇所に依存せずに保存されるため、システムの信頼性が向上します。

    (2) ブロックの連鎖

    データはブロックと呼ばれる単位に分割され、それぞれのブロックは前のブロックの情報を含むハッシュ値でリンクされます。これにより、過去の取引履歴が改ざんされないように保護されます。

    (3) 暗号学的ハッシュ

    各ブロックは暗号学的ハッシュ関数によって生成されたハッシュ値で識別されます。ハッシュは前のブロックの情報に基づいて生成されるため、一つのブロックが変更されると、それ以降のすべてのブロックも無効化されるため改ざんが難しくなります。

    (4) コンセンサスアルゴリズム

    新しいブロックを追加する際、ノード間で合意を形成するためのコンセンサスアルゴリズムが利用されます。代表的なものにProof of Work(PoW)やProof of Stake(PoS)があり、合意形成を保証します。

    (5) スマートコントラクト

    ブロックチェーン上でプログラムが自動的に実行されるスマートコントラクトが利用されます。契約内容や条件をプログラム化し、自動的な取引の実行や契約履行が可能となります。

    【ブロックチェーンのメリット】

    ブロックチェーンは、ビジネスにおける信頼性、透明性、効率性を向上させる革新的なテクノロジーとして注目されています。

    • 信頼性の向上
      透明性とセキュリティが取引の信頼性を高め、信頼不足を解消。
    • 中間業者の排除
      取引の中間業者を排除し、効率的なプロセスと低コストを実現。
    • トレーサビリティ
      製品の原材料や流通過程を追跡し、品質管理や適切な供給チェーンを確保。
    • 新たなビジネスモデルの創出機会
      スマートコントラクトを用いた新しいビジネスモデルやサービスが創出される。
    • 横断的な協力関係の形成
      異なる組織間での協力が容易になり、業界全体のイノベーションが促進されます。

    【企業によるブロックチェーンの活用事例】

    ブロックチェーンは様々な領域で活用しています。以下にいくつかの事例を紹介します。

    (1) 製造業

    • サプライチェーン管理 原材料から最終製品までのサプライチェーン管理にブロックチェーンを活用。トレーサビリティと透明性を確保して品質管理や偽造の防止に貢献します。
    • 知的財産管理とライセンス管理 製品の知的財産情報やライセンスの管理にブロックチェーンを活用。製品のデザインや特許情報などの知的財産データをブロックチェーン上に格納し、改ざんを防ぎつつ、必要なライセンス情報を迅速に管理・共有できる環境を構築しています。
    • 保証書のデジタル化 製品の保証書や品質証明書をブロックチェーン上にデジタル化することで、顧客と製造業者間で情報共有が容易になり、信頼性を高めています。

    (2) 小売業

    • 商品の偽造防止と透明性向上
      ブロックチェーンを使用して、商品の偽造防止と透明性向上を実現。商品に対するブロックチェーンのタグを提供し、消費者はスマートフォンで商品情報を確認して本物商品を確実に購入できるようになります。また、商品の供給チェーンを追跡し、偽造品の流通を防止します。
    • 物流管理とトレーサビリティ
      ブロックチェーン技術を使用して、食品のトレーサビリティと物流管理を向上。商品の製造から販売までの供給チェーンをブロックチェーン上で透明に管理することで、食品の安全性と品質を確保し、必要な場合に迅速なリコール手続きを実施できます。
    • ロイヤルカスタマーへの報酬
      ブロックチェーンでプログラム化された報酬ポイントや仮想通貨を利用して、ロイヤルカスタマーに対するリワードを追跡。顧客のエンゲージメントとロイヤルティを向上させます。

    (3) 金融業

    • 国際送金の効率化
      ブロックチェーン技術を使って国際送金プロセスを透明化し、仲介銀行を排除。中間手数料や処理時間を削減し、送金のスピードとコスト効率を向上させます。
    • KYC(本人確認手続き)の改善
      ブロックチェーン技術を使って顧客のデジタルIDを確認するKYCプロセスを効率化し、コスト削減や顧客データの安全性を向上させます。
    • デジタル証券の発行
      ブロックチェーン技術を使って従来の株式や債券と同じ権利を持つデジタルトークンとしてデジタル証券を発行。証券取引所を介さずにデジタル環境でトレーディングが可能となり、株式の分割や譲渡を行えます。

    (4) 交通・物流業

    • 貨物追跡と流通管理
      ブロックチェーンを使用し、物流プロセスの可視化と追跡を実現。貨物の出荷から配送までの経過を透明に管理し、遅延や紛失を防ぎます。
    • ドキュメント管理と効率化
      運送契約書や関連文書をブロックチェーン上に保存し、データの改ざんを防ぎつつ、関係者間での共有とアクセスを迅速化します。
    • スマートコントラクトによる支払いと配送
      スマートコントラクトを使用し、配送プロセスと支払いを自動化。配達完了と合致した時点で支払いが行われる仕組みを構築し、効率的な取引を促進します。

    (5) 医療業

    • 患者データのセキュアな共有
      ブロックチェーンを使用し、薬剤の供給チェーンをトレーサビリティで管理。薬剤の原料から製造、流通までの過程を透明に記録し、偽薬の流入を防ぎます。
    • 薬物調剤のトレーサビリティ
      ブロックチェーンを使用し、薬品の製造から流通までのプロセスを記録。薬剤の品質と安全性、透明性を確保し、偽薬の流通を防ぎます。
    • 臨床試験データの信頼性確保
      臨床試験のデータをブロックチェーンで記録。データ改ざんを防ぎ、研究結果の信頼性を高め、新薬開発を加速させます。

    (6)ゲーム・エンターテインメント業

    • デジタルコレクティブルの販売
      エンターテイメント業界では、各種キャラクターをNFTとして発行し、ファンに直接デジタルコレクティブル(デジタルアイテム)を販売しています。
    • ライブイベントのアクセス許可
      エンターテイメント業界では、ライブコンサートやイベントのアクセス許可をNFTとして提供しています。NFTを持っているファンは、ライブ配信やバックステージへのアクセスなどの特典を得ることができます。
    • 仮想世界内のアイテム所有権
      ゲーム業界では、ブロックチェーンを使用して仮想世界内のアイテムやアバターの所有権をNFTとして確立する事例が増えています。プレイヤーはNFTを購入し、ゲーム内で独自のアイテムを所有・トレードしています。

    7. ノーコード開発/ローコード開発

    ノーコード開発(No-Code Development)とローコード開発(Low-Code Development)は、DX推進の鍵となる技術であり、ビジネスのイノベーションを促進する重要なツールです。ノーコード開発とローコード開発は、プログラミングの知識が限られているユーザーでもアプリケーションを構築できる技術ですが、そのアプローチには違いがあります。

    【ノーコード開発/ローコード開発とは】

  • ノーコード開発(No-Code Development)
  • ノーコード開発とは、プログラミングの知識がない人々によるアプリケーションやソフトウェアの構築を容易にする手法です。

    従来の複雑なコーディングが不要で、直感的なユーザーインターフェースやドラッグ&ドロップ機能を通じて、ビジュアルなアプローチで開発が可能です。既存のコンポーネントやテンプレートを選択し、必要な設定を行うことで、独自のアプリケーションを簡単に作成できます。

    ノーコード開発により、ビジネス部門や非技術的なスタッフも迅速にカスタマイズされたソリューションを構築し、効果的なデジタル変革を実現することできます。

  • ローコード開発(Low-Code Development)
  • ローコード開発は、プログラミングの知識が少なくてもアプリケーションを効率的に構築できる手法です。

    繁雑なコーディングを最小限に抑え、視覚的なユーザーインターフェースや事前に用意されたコンポーネントを使用して、アプリケーションを組み立てることができます。

    これにより、開発スピードが向上し、ビジネスニーズに合わせた柔軟なカスタマイズが容易に実現できます。また、エキスパートな開発者も高度なプロジェクトを迅速に展開できるため、効率性とコラボレーションが促進されます。

    ローコード開発は、ビジネスのデジタル化をスムーズに進め、革新的なソリューションを素早く提供するための重要なアプローチです。

    両者の違いは、ノーコードがプログラミング不要であるのに対し、ローコードは少量のコードを含むことと言えます。ノーコードは簡単で即時にアプリを作成したい場合に適しています。ローコードは柔軟性や拡張性を求める場合に適しています。どちらもビジネスプロセスのデジタル化と革新を支援する有力なツールとして、企業のDX戦略に欠かせません。

    【ノーコード開発/ローコード開発のメリット・デメリット】

    企業はクラノーコード開発とローコード開発は以下のようなメリットとデメリットがあります。

    メリット

    • 迅速なアプリ開発
      ノーコードではプログラミング不要でアプリを作成でき、ローコードでもプログラミング知識が少なくても開発が可能。業務ニーズにスピーディに対応できる。
    • ビジネスとITの連携強化
      ノーコード/ローコードのプラットフォームは、ビジネス部門とIT部門との協力を促進。業務の要件をITにスムーズに伝え、アプリの効果的な開発が可能。
    •  適応力の向上
      ノーコード/ローコードはアプリの変更が容易。市場変化に素早く適応し、ビジネスの競争力を高める。

    デメリット

    • 複雑アプリへの制約
      ノーコードでは複雑なアプリや特定の要件には限界があり、ローコードでも柔軟性に制約がある。したがって、要件によっては従来の開発手法が必要になる場合がある。
    • カスタマイズと柔軟性の限界
      ノーコード/ローコードは高度なカスタマイズは困難。特定の業務プロセスに適合させるには、専門的なプログラミングスキルが必要となる。
    • スケーラビリティの懸念
      大規模プロジェクトや複雑なシステムには限界があり、適切な専門スキルを持つ開発者が必要になる。

    【ノーコード開発/ローコード開発の主なプラットフォームやツール】

    これらのクラウドサービスモデルを組み合わせて、企業はDX推進に必要なソフトウェアやプラットフォーム、インフラストラクチャを効率的に利用し、ビジネスプロセスを改善できます。例えば、以下のような事例が考えられます。

    • Microsoft Power Apps
      マイクロソフトが提供するローコード開発プラットフォーム。ビジネスアプリケーションの構築やデータ連携を容易にする。DX推進やプロセス自動化に適している。
    • Salesforce Lightning Platform
      Salesforceのローコード開発プラットフォーム。CRMのカスタマイズやプロセス最適化に活用される。
    • Mendix
      シーメンスが提供するエンタープライズ向けローコード開発プラットフォーム。ビジネスアプリケーションの効率的な開発とプロセス自動化を支援する。
    • Appian
      Appianが提供するプロセス自動化とビジネスアプリケーション開発を統合するプラットフォーム。
    • Airtable
      スプレッドシート型データベースに特化したノーコードツール。プロジェクト管理や情報共有に利用。
    • Zoho Creator
      ビジネスに必要なソフトウェアの設計、開発、運用を支援するローコードアプリケーション開発プラットフォーム。
    • OutSystems
      設計から運用までをカバーするローコードプラットフォーム。開発した各種アプリのライフサイクル管理まで行うことができる。
    • AppSheet
      Goolgeが提供するプログラミング不要のノーコード開発ツール。スプレッドシートを基にしたアプリケーションの開発が行える。

    【ノーコード開発/ローコード開発の活用例】

    ノーコード/ローコード開発は、下記のように多岐にわたる目的でアプリ開発を行うことができます。

    (1) 業務効率向上

    • 申請プロセス自動化
      ローコード開発プラットフォームを活用して、社内の申請プロセスを自動化する。従来の手作業が減少させ業務効率の向上を図る。
    • 勤怠管理アプリ
      ノーコード開発プラットフォームを使用して、従業員の勤怠管理アプリを開発し、シームレスなタイムトラッキングと給与計算を行う。
    •  プロトタイプ開発
      デザイン部門がローコード開発ツールを使用して、プロトタイプを開発する。アイデアの検証と改善を容易にするとともに迅速化を図る。

    (2) データ分析と可視化

    • ダッシュボードの構築
      ノーコード開発プラットフォームを使用して、リアルタイムの金融データを可視化するダッシュボードを構築し、意思決定を迅速化する。
    • 顧客データ分析アプリ
      ローコード開発ツールを使用して、顧客データを分析・可視化するアプリを開発し、個別顧客に合わせたサービス提供する。

    (3) ビジネスプロセスの最適化

    • 在庫管理アプリ
      ノーコード開発プラットフォームを使用して、在庫管理アプリを構築し、在庫追跡と供給チェーンを最適化する。
    • フィールドサービスアプリ
      物流業界で、ローコード開発ツールを使用して、フィールドサービスの管理アプリを開発し、効率的なスケジュール管理とリアルタイムトラッキングを行う。

    (4) モバイルアプリケーション開発

    • 従業員向けモバイルアプリ
      ノーコード開発プラットフォームを使用して、従業員向けのコミュニケーションモバイルアプリを簡易に開発し、社内のチーム連携の円滑化を図る。
    • 顧客向けアプリケーション
      ホテル業界でローコードラットフォームを活用して、顧客向けのモバイルアプリを構築し、予約管理や特典の提供を行い顧客満足度の向上を図る。

    (5) カスタマーエクスペリエンスの向上

    • オンライン注文プラットフォーム
      小企業でノーコード開発ツールを使用して、オンライン注文プラットフォームを迅速に構築し、顧客の利便性向上を図る。
    • 顧客フィードバックアプリ
      飲食業でローコード開発ツールを使用して、顧客からのリアルタイムフィードバックを収集するアプリを開発し、改善活動に直接フィードバックを反映させる。

    (6) イノベーション促進

    • アイデア提案プラットフォーム
      ノーコード開発ツールを使用して、社内アイデア提案プラットフォームを構築し、社員参加のイノベーションを推進する。
    • フィールドサービスアプリ
      物流業界でローコード開発ツールを使用して、フィールドサービスの管理アプリを開発し、効率的なスケジュール管理とリアルタイムトラッキングを行う。

    これらの活用例は、企業がノーコード/ローコード開発を通じて短期間でアプリケーションを開発してDXを推進することで、効率向上、プロセス改善、データ活用、顧客満足度の向上などの様々な目的の達成を可能にすることを示しています。

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    February 28, 2023

    オフショア開発でコミュニケーションの壁を乗り越える基本的な手段とは?

    オフショア開発において、言葉の壁や文化の違いは円滑なコミュニケーションの障害となることがしばしばあります。異なる母国語や習慣を持つエンジニアとの間での誤解を回避し、プロジェクトの成功を確保するためには、適切な対策が不可欠です。本記事では、オフショア開発におけるコミュニケーションの壁を乗り越える上でもっとも基本的なオフショア開発の形態や方法について解説します。 適切なオフショア開発形態を選択する 適切なオフショア開発形態を選択する まずは、オフショア開発をどのような形態や方法によって行うかによって、コミュニケーションのしやすさが大きく異なってきます。オフショア開発の形態は、各企業やプロジェクトよってさまざまです。 代表的には、以下のような形態があります。発注元の企業は、プロジェクトの性質や要件、予算などを考慮して、最適なオフショア開発方法を選択する必要があります。 オフショア開発(オフショアリモート開発) 発注元の国や地域とは異なる国や地域に開発を委託し、プロジェクトの進行をオンラインツールやコミュニケーションプラットフォームを通じて遠隔で管理します。クライアントと開発チームは物理的には近くにいないため、リモートでのコミュニケーションが主要な手段となります。 オフショア開発(オフショアリモート開発) 開発チームや担当者がプロジェクトの発注元の国や地域に派遣され、クライアントの現地で作業を行います。オンサイトのメンバーは直接クライアントとコミュニケーションを取り、要件の理解やフィードバックの収集を容易にします。 ハイブリッドアプローチ 開発チームや担当者がプロジェクトの発注元の国や地域に派遣され、クライアントの現地で作業を行います。オンサイトのメンバーは直接クライアントとコミュニケーションを取り、要件の理解やフィードバックの収集を容易にします。 オフショア開発センター オフショア開発センターは、発注元の国や地域とは別の国や地域に、独立した開発拠点を設置する方法です。これにより、外部の開発会社とは独立した開発チームを持つことができます。クライアントが自社の拠点を持つことで、プロジェクトのコントロールとセキュリティの管理をより直接的に行うことができます。 言葉の壁や文化の違いを乗り越えて、コミュニケーションを円滑にする方法 1. 日本語でコミュニケーションできるブリッジSEを必ずアサインする オフショア開発チームと日本語でコミュニケーションを行おうとする場合は、しっかりと日本語で技術的なコミュニケーションができる人材が在籍しているオフショア開発企業を選定する必要があります。実際にメンバー選定する場合には、どの程度の水準でコミュニケーションが可能なのか、実際に面談するなどして確認しておきたいところです。 特に、日本企業のプロジェクトでは、確定した設計仕様の変更などが生じるケースがありますが、こうした場合にはコミュニケーションは特に重要となります。例えば、日本語で何とか会話出来るというレベルと、きちんと意思疎通できて安心感のあるコミュニケーションができるレベルでは、開発現場においてその差はとても大きなものとなるはずです。 オフショア開発企業によっては、日本語を流ちょうに話すものの、技術的知識やスキルが少ないコーディネーター(またはコミュニケーターと呼ばれる人)をブリッジとしてアサインするケースがあります。そのようなケースでは、技術的な意思疎通がうまく得られないという問題が生じ、コミュニケーションロスに苦戦する可能性があります。 一方、日本企業向けに特化した日本企業とのプロジェクトの経験豊富なオフショア開発企業であれば、オンサイトで日本在住経験があり日本語レベルが高く、日本文化や日本型の開発手順への理解度も高いSEが在籍しており、日本人SEが在籍している場合もあります。こうしたブリッジSEはドキュメントも日本語で作成しますので、会話や文字による意思疎通にも安心感が得られるはずです。 また、こうした日本企業向けのオフショア開発企業では、オフショア現地においても従業員の教育体制を整えて日本語教育を行っており、日本語能力試験のN1、N2に合格するレベルのコミュニケーションができる多数のエンジニアが在籍しています。 2. オフショア開発会社のエンジニアにオンサイト常駐してもらう オフショア開発における「オンサイト」には、多くのメリットがあり、コミュニケーションに関連するメリットが重要です。以下に主なメリットを列挙します。 コミュニケーションの円滑化 オンサイトメンバーが現地にいることで、クライアントとのコミュニケーションがスムーズに行われます。リアルタイムで会話をすることで、要件や課題の理解が深まり、ミスコミュニケーションのリスクが低減します。 フィードバックと変更への対応 オンサイトメンバーが直接プロジェクトの進捗を把握できるため、クライアントのフィードバックや要件変更に対応するのが容易です。迅速な対応により、プロジェクトの品質向上やタイムリーな納品が可能となります。 現地の文化や業界知識の理解 オンサイトメンバーがクライアントの現地にいることで、その国や地域の文化や業界のニーズをより深く理解することができます。これにより、より適切なソリューションの提供が可能となります。 信頼関係の構築 直接会って顔を合わせることで、クライアントとオフショア開発チームとの間に信頼関係が築かれやすくなります。信頼関係があると、プロジェクトの協力的な進行や問題の解決が円滑に行われるでしょう。 グローバルな視野の拡大 オンサイトメンバーが直接プロジェクトの進捗を把握できるため、クライアントのフィードバックや要件変更に対応するのが容易です。迅速な対応により、プロジェクトの品質向上やタイムリーな納品が可能となります。 ただし、オンサイトにはコストや時間の面での課題もあるため、企業はオフショア開発とオンサイトの組み合わせを検討し、プロジェクトの要件や条件に応じて最適な方法を選択する必要があります。 3. 日本側のPMがオフショア現地に常駐してマネジメントする 日本側のプロジェクトマネージャー(PM)がオフショア現地に常駐することには、いくつかの重要なメリットがあります。特に、コミュニケーション面においては以下のようなメリットがあります。 コミュニケーションの円滑化 現地にいることで、リアルタイムで会話をし、課題や進捗状況を共有できるため、ミスコミュニケーションのリスクが低減し、開発チームとのコミュニケーションがスムーズに行うことができます。 要件の適切な伝達 直接顔を合わせることで、誤解を防ぎ、要件の理解度を確認することができるため、要件やニーズをより正確に伝えることができます。 フィードバックの収集と即時の対応 オフショア現地にいることで、プロジェクトに関する質問や修正が即座に行われることが可能になります。フィードバックを容易に収集し、必要な変更に素早く対応できます。 文化的な違いの理解 オフショア現地の文化やビジネス慣習をより深く理解できます。これにより、開発チームとの間に信頼関係が構築され、円滑なコミュニケーションが促進されます。 緊急時の対応 緊急の課題やトラブルに迅速に対応できます。時間差がある場合、オフショア開発チームが問題に対処するのに時間がかかることがありますが、PMが現地に常駐することで、素早い対応が期待できます。 このように、PMがオフショア現地に常駐することで、コミュニケーションの円滑化やプロジェクトの成功に寄与します。ただし、常駐には様々なコストや準備時間の面での課題もあるため、プロジェクトの要件や条件に応じて、最適なアプローチを選択する必要があります。 4. 英語を共通言語にする 母国語としないアジアの国々も含めて海外のオフショア開発会社とコミュニケーションを取る際、共通の言語として英語を選択する理由は複数あります。 英語は世界的に広く普及しており、アジアの多くの国でも教育やビジネスで使用されているため、異なる母国語を持つ相手と円滑なコミュニケーションを図るのに適しています。 また、アジアの国々がグローバルなビジネス展開を進めているため、国際取引やプロジェクトにおいて英語が共通の言語として選ばれることが増えています。 さらに、英語を共通言語とすることで、文化的な違いを克服し、より明確なコミュニケーションが可能となります。アジアには多様な言語が存在するため、特定のアジア言語を共通言語とすると相手とのコミュニケーションが難しくなることもあります。しかし、英語は多くのアジアの国々で使用されているため、より広範な相手とのコミュニケーションが可能です。 […]

    February 28, 2023

    失敗事例から学ぶ、オフショア開発成功への9つのヒント

    昨今、ITシステム開発の現場では、オフショア開発という選択肢は一般的となりました。しかし、中には当初に想い描いた通りにはプロジェクトを進めることができなかったという声も聞こえてきます。そこで、本記事では、オフショア開発の失敗事例から学ぶ、失敗原因や成功へのヒントにについて紹介します。 オフショア開発で陥りやすい失敗事例 まずは、オフショア開発での失敗事例としてよく耳にする話題をいくつかご紹介します。 失敗事例1:仕様伝達に失敗し、納期が遅延してしまった 発注元の担当者は、発注先のオフショア開発会社に日本語ができるブリッジSEをアサインしてもらい、仕様と作業内容を文書にまとめてブリッジSEとミーティングを行って説明した。 ミーティングは日本語で行ったが、ブリッジSEも要求をよく理解してくれているように見えたため、日本語のコミュニケーションでも問題ないと判断していた。その後の進捗状況の確認でも、ブリッジSEからの報告は常に「問題なし」という回答があり安心していた。 しかし、次第にブリッジSEから1日に数回の質問が毎日のように届くようになった。担当者はその質問への回答作業に追われる日々となってしまい、レビューによる品質確認を行う時間を確保することができぬまま納期を迎えてしまった。 これは、オフショア開発会社への仕様の伝達がうまくいかずに作業の遅延が発生してしまったケースです。原因は、発注先の窓口となるブリッジSEとの日本語による意思疎通ができたため、仕様伝達のハードルは低かったと思い込んでしまったことにあります。 しかし、発注先のオフショア開発会社の窓口となるすべての人が技術面について知識を持っているとは限りません。 中には、主に通訳を役割とするコミュニケーターと呼ばれるべき人材にブリッジSEという肩書きを与えているオフショア開発会社も存在します。 このような失敗を回避するためには、窓口となるブリッジSEの日本語の言語能力の確認にとどまらず、そのブリッジSEの職務範囲や職能まで確認しておくことが大切です。 もし、オフショア会社の窓口担当者の技術的な内容の理解度に不安を感じる場合には、そのコミュニケーターを介して仕様伝達を行うのではなく、直接現地のSEと英語でやりとりを行う方がお互いの理解度を確認しながら進めることができるでしょう。その方が結果的には二度手間の発生を抑制でき、間接コストも削減することができるでしょう。 失敗事例2:度重なる仕様変更により、コストが増大してしまった 全体の仕様が確定しておらず、一部の仕様は暫定的なものとして見積を行い、そのまま見切り発車で発注した。 暫定部分は、発注後に五月雨式に仕様伝達を行ったものの、その後も仕様変更が繰り返され曖昧な仕様が残ったままだったため、ドキュメント作成やメールやチャットなどの仕様伝達の工数が増大した。 また、開発現場でも仕様の混乱や手戻りが発生し、当然スケジュールも大幅に遅延して収拾がつかなくなった。そのため、開発途中でブリッジSEと仕様確認の仕切り直しが必要となった。 その結果、コミュニケーションと開発の工数が増大し、最終的には、見積金額を大幅に超えてしまった。 これは、仕様が曖昧なまま発注したうえに仕様変更を繰り返した結果、コストと納期がオーバーしてしまったケースです。国内開発の発注においても発生し得るような例ですが、走りながら徐々に要求仕様を決めていくというやり方は、典型的な日本型の開発アプローチと言えます。 オフショア開発をこのような国内開発の感覚で行ってしまうと、信頼関係にひびが入ってしまい想像以上にトラブルを拡大させてしまう危険性があります。信頼関係がなければプロジェクトが失敗する確率は限りなく高くなるでしょう。そうなれば、金銭面でもトラブルに発展しまう可能性があります。 仕様を変更すること自体は問題ないのですが、問題は仕様変更をスムーズに進めるための段取りとコミュニケーションにあると考えられます。オフショア開発ベンダー側の状況を考慮して伝達することが大切です。 失敗事例3:日本語での意思疎通の失敗 ある過去に一度、開発を依頼したことがあるオフショア開発会社に、新規のプロジェクトを依頼した。初めて発注した際は、日本語でのコミュニケーションに多少の不安を抱いていたものの、アサインされたブリッジSEがとても優秀で、日本語スキルや技術レベルは事前の説明通りにレベルが高く、プロジェクトは無事成功を収める事ができた。 そこで、同じオフショア開発会社に別のプロジェクトを追加発注したところ、アサインされたブリッジSEの日本語スキルが低く、前回のブリッジSEと比較すると大幅に劣っていた。 事前に、コミュニケーション言語は日本語で行うとの取り決めていたものの、メールで質問を受け付けても一体何を伝えたいのか理解できないようなことがかった。そこで英文でのやりとりも試してみたが英語もさほど得意ではないらしく、結局、意思疎通はなかなか改善せず苦労した。 オフショア開発会社からの事前説明での「日本語コミュニケーションが可能な優秀な技術者が在籍している」との話に期待したところ、その事前期待が結果と異なっていて失敗したケースです。 たしかに、最初のプロジェクトにアサインされたブリッジSEは期待以上の能力を発揮してくれたため、次のプロジェクトでも期待するのは自然なことです。 初めての取引の際は、どこのオフショア開発会社もエース級の人材をアサインしてくるとうのはよくあることです。とはいえ、そのように優秀な人材が社内に多数在籍していて、発注者が希望するタイミングでいつでもアサインできるかどうかはまた別の話です。 このケースでは、エース級の人材は少数しか在籍していなかったり、または優秀な人材は別のプロジェクトに参加していて自社の案件にはアサインできなかったのかもしません。 顧客の要望に応じて、最適な人材を安定的にアサインできるかどうかは、オフショア開発会社それぞれの事情によって大きく異なります。特に、人材の豊富さは事業規模が大きいオフショア開発会社の方が有利でしょうし、また特定分野の人材であれば、小規模でもその分野に専門特化したオフショア開発会社なら最適な人材を確保できるかもしれません。 なお、日本市場に注力して事業を展開しているオフショア開発会社では、社内で日本語教育を行っていることは珍しくありません。しかし、その教育内容や方法も企業にとってさまざまで、営業やブリッジSEに限定して教育している場合もあれば、その他のエンジニアも含めて行う場合もあります。 また、日本語認定資格の取得を奨励し、資格取得手当てなどの制度を設けている企業もありますし、採用段階で選考基準として日本語のスキルレベルの高い人材や、日本国内でのビジネス経験や日本企業とのプロジェクト経験がある人材を多く採用しているケースもあります。オフショア開発会社選びの際には、そのような日本語教育のへの取組み状況状況も確認しておくとよいでしょう。 オフショア開発を成功に導くための9つのヒント 先述の陥りがちなオフショア開発での失敗事例のような問題は、実は日本国内での日本人エンジニアによる開発でも起こり得ることです。オフショア開発の現場では、とりわけ言語、文化、国民性の違いによるコミュニケーションのギャップが問題を生じさせる原因となる場合が多いです。そこで、ここではオフショア開発での失敗を回避し、開発プロジェクトを成功させへと導くための9つのポイントを紹介します。 1. コミュニケーション言語のスキルレベルを確認する 日本語や英語など、オフショア開発会社とのコミュニケーション言語を取り決める際には、コミュニケーションに支障がない程度の言語スキルを持っているかを事前に確認しましょう。 例えば、コミュニケーション言語を日本語にすると取り決めた場合、そのスキルレベルを客観的に把握する一つの目安としては日本語検定試験(JLPT)があります。日本語能力試験は、日本国内および海外で日本語を母語としない人を対象として日本語の能力を測定し、認定することを目的として行う試験です。試験はN1からN5レベルまでの5段階に分けられており、N1は最も難易度が高くなっています。 N1は幅広い場面で使われる日本語を理解することができるレベルで、N2は日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができるレベルとされています。そうしたことから、外国人を採用する企業では、在留資格・ビザ取得の観点からもN1〜N2を選考基準としている場合が多いようです。 N1は日本語ネイティブでも満点を取るのが難しいレベルの試験と言われていますので、N1保持者であればビジネスシーンでの活躍を期待できるでしょう。しかし、必ずしもすべてのエンジニアがN1レベルを取得している必要はなく、担当業務に合わせて日本語能力がどの程度必要なのかを基準とするのがよいでしょう。オフショア開発の場合では、ブリッジSEの日本語能力は重要ですが、オフショア国現地で働くエンジニアには必ずしも日本語スキルは必要とされません。 なお、日本語能力試験の問題は文章読解と聴解のみのため、書く、話す、といった能力は測ることはできません。そのため、ブリッジSEをアサインする際には、面接やディスカッション、メールのやりとりなどを取り入れると良いでしょう。 2. 日本との文化や国民性の違いを認識し、明確に意思表示する 日本と海外では、考え方や仕事の進め方も異なります。日本では、物事をこと細かく伝えなくても相手は当然のごとく察してくれるだろうと期待してしまいがちです。しかし、海外では、相手に明確な意思表示をしなければ伝わらないコミュニケーション文化を持つの国の方が多いです。むしろ、相手に繊細かつ高度な感性を求める日本式コミュニケーションの方がガラパゴス的と言えるかもしれません。 こうした文化や国民性の違いによって意思疎通や相互理解がうまくいかなくなってしまうと、結果として品質低下や手戻りが発生してしまうことがあります。 本側から物事を依頼する時は、目的(なぜやるのか)、スコープ(何をやるのか)、タイム(いつまでに必要か)、コスト(いくら以内でやるのか)を可視化してプロジェクトの目的を一致させ、認識の食い違いを防止することが大切です。 また、開発先の文化や国民性を理解しておくと、誤解や思い違いを少なくできます。時にはやり方を日本式に合わせてもらうように強制するばかりではなく、お互いに文化が違う国であることを理解し歩み寄る姿勢も大切です。 3. 情報共有や取り決めは、可能な限り文書化する 日本では、話し手と聞き手の間に共有されていることが多いため、行間を読み、暗黙的なコミュニケーションが成立しやすい文化といえます。また、日本では会議の場での共有や明確化をすることが多くなりますが、口頭による伝達や暗黙知の共有が含まれるため文書化しにくかったり、伝達する内容が多く労力がかかるという理由から、文書化しないケースが度々見られます。 一方、海外では、共有する情報や経験が少ないため、文章や図解、数値などによって、誰が見ても理解できるような形式で客観的に表現された形式知によるコミュニケーションが行われること多々あります。これは、個人主義的な文化の国ほど強くなえる傾向が見られます。そのため、母国語が異なる国のメンバーと日本語で業務を進めるオフショアの場合には、仕様等を確実に文書化してデータベースで共有するのが望ましいでしょう。 過去にオフショアで失敗を経験した日本企業による教育指導的な役割によって、日本企業とのプロジェクト経験が多いオフショア開発会社ほどそのような体制が整っています。こうした取り組みは、転職率の高いオフショア開発の課題をカバーするためにも有効です。 また、口約束で決まったと思っていたことが後になって変更となり、問題になることがあります。決めごとは合意と承認があって成立するものですので、可能な限り文書化して相互に承認ルールを確認し徹底することが大切です。 4. 仕様変更と品質レベルに関する考え方の違いを意識する 日本では、度重なる仕様変更が生じても、それに対応することが当然であると考えられがちです。一方、オフショア開発では、契約締結後に仕様変更を行うことは一般的とは言えません。そのため、仕様変更を巡ってはトラブルが発生する可能性があります。 […]

    February 28, 2023

    日本企業が抱えるシステム開発の課題と今後のオフショア開発の方向性とは

    日本企業のシステム開発は、IT人材不足と開発コスト増加が大きな問題となっています。急速なデジタル化とテクノロジーの進化に追いつくための、適切なITエンジニアやデジタル専門家の確保が難しく、開発コストも上昇しています。この課題に対し、「リスキリング」と「オフショア開発」という解決策が注目されています。企業は、内部のスキル向上とグローバル競争への対応を目指し、オフショア開発を 人材戦略に活用することで、人材不足を克服し、競争力を高める展望が期待されています。 オフショア開発の現状 DX人材不足の解決策としても注目されている、オフショア開発の現状を紹介します。 オフショア開発の規模が拡大している 経済産業省が2019年に発表した「IT人材育成の状況等について」によると、日本では2030年までに約59万人のIT人材が不足すると予想しています。今後も優秀なエンジニアを確保するために、オフショア開発を導入する企業の増加が考えられるでしょう。 DX推進やシステム開発の需要拡大により、日本でのオフショア開発の規模は拡大しています。独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の調べでは、日本のIT企業の約45.6%がオフショア開発を導入している、またはなんらかの形でオフショア開発に関与しているというデータがあります。 【別記事】なぜ日本のIT企業のオフショア開発が活発化してるのか 中小企業の委託元が増加している 海外進出のため費用と手間がかかり、少し前まではオフショア開発を導入しているのは大企業が多い傾向でした。しかし、最近ではグローバル化が進んでいることや、オフショア開発のノウハウが蓄積されたことによって中小企業の委託元が増加しています。 委託先国としてベトナムが人気 オフショア開発の委託先といえば、かつては中国やインドが人気国でした。近年では人件費が安く、優れた人材が豊富で、真面目な国民性などの要因を持ったベトナムが人気を集めています。 オフショア開発の希望委託先国について、オフショア開発.comがまとめたデータ(2020年1月〜12月に「オフショア開発.com」に寄せられた開発相談の希望委託先国別ランキングより)によると、1位がベトナムで、全体に占める割合は52%でした。 【別記事】【2022年最新】オフショア開発の人月単価相場動向、人気のベトナムほか国別比較 日本企業のオフショア開発導入の目的の変化 昨今、日本企業のオフショア開発導入の目的が変化してきています。以前は、コスト削減が主な目的でしたが、企業のデジタル競争力を高めるDX人材不足の対応策や、品質の確保といった目的にシフトしています。 NFT、DeFi、Web3.0、メタバースなどの新しい風潮 スイスのIMDが発表している「世界デジタル競争力ランキング」で日本は2020年に63カ国中27位という結果で、2021年には28位と順位を下げています。日本の順位は年々デジタル競争力を高めている香港や韓国、台湾と比べると対象的な数値となっています。 日本企業のデジタル化が世界各国の企業より遅れている理由の一つに、DX人材不足が挙げられます。そのため日本で不足しているAI、IoT、ブロックチェーンなどの先端技術スキルを持った人材を補うために、オフショア開発導入に向けての動きが増しているのです。さらなる企業のオフショア開発導入の加速に向けた背景にあるのが「NFT」「DeFi」「Web3.0」「メタバース」などの新しい風潮です。 ブロックチェーン技術をベースにして唯一無二の「一点もの」を生み出せるトークンである「NFT」、金融エコシステムの「DeFi」、仮想空間の「メタバース」など、これらはIT業界やテック業界を越えてさまざまな業界で注目を集めています。これらNFT、DeFi、メタバースなどのブロックチェーン技術をベースにした各カテゴリーを包括する位置付けとなるのが「Web3.0」です。 Web3.0は「分散型のWeb」を意味し、巨大IT企業による支配からのデータの解放を目的としています。世界各国がWeb3.0推進への取り組みが進む中、日本の出遅れを防ぐため日本政府が2022年6月に経済財政運営の指針である「骨太の方針」にWeb3.0の環境設備を明記しました。日本のグローバルな競争力を高めるには、Web3.0のブロックチェーン技術は欠かせません。 オフショア開発における今後の方向性 こうしたことを踏まえ、日本企業のオフショア開発導の今後の方向性は次のようなことが考えられます。 オフショアの役割を下流工程から上流工程まで拡大する 実は、オフショア開発の対象業務は、国によって異なります。例えば、米国企業では、上流工程から下流工程まで任せるのが一般的です。米国のユーザー企業は多数のITエンジニアを採用し、社内のIT部門に配置しているため、基本的には自社システムの開発から運用まで内製化するのが主流です。これは、社内技術やノウハウを社外に流出させないためでもあり、日本のように自社のシステム開発を外部のSI企業に全てお任せするということはありません。 オフショア開発などの外部リソースを活用するのは社内でリソース不足が発生した場合です。また、ユーザー企業にとって開発プロジェクトが完了したら終わりということはなく、リリース後にブラッシュアップしていくことを前提として、アジャイル開発でによってサービスインまでの期間を短縮できるのが特徴ですなどので補うというにで、自社のエンジニアのスキルアップにつながっています。これまでの日本企業のオフショア開発では、海外の委託先には下流工程中心にまかせるのが一般的でした。 従来型の形態では、日本のエンジニアの技術スキルが低下する懸念もありつつも、日本企業が海外の企業と同じような導入形態にならないのは、顧客の要件定義が固まらないという課題があったからです。そこで、作業要領も含め日本での開発と同様に、要件定義を明確に行うことで課題の解消につながり、日本企業でも委託先に上流工程までまかせる動きが拡大しています。これにより日本のDX人材強化も期待できるでしょう。 DX領域にシフト 従来、日本企業が海外の委託先にまかせていたのは、基幹システムや既存システムが中心でした。しかしながら、日本企業が変化の激しいビジネス環境の中で優位性を確立するには、デジタル競争力を高めることが急務となっています。DXによる事業改革が不可避となっている昨今、AI、IoTといったDX領域へと業務の委託内容がシフトしています。 ここでDX領域を委託する際に課題に挙がるのが、海外の委託先にDX領域の開発をまかせてしまうため、自社のエンジニアのスキルアップにつながらないことです。課題の解決策として、上流工程、下流工程の分担を明確にしているウォーターフォール開発ではなく、チームを組んで海外のエンジニアと一緒に要件定義、設計、開発、テストといった開発工程を行うアジャイル開発の活用があります。 日本のエンジニアにとっても、海外の優秀なエンジニアと一緒のチームで働くことで、スキルアップにつながることが期待できます。大手のオフショア開発企業や弊社のエンジニアの技術レベルは高く、DX時代にふさわしい優秀な人材を確保することも可能です。 人材不足面でのオフショア開発活用 上記の1、2では日本のDX人材、エンジニアのスキルアップに向けたオフショア開発企業の活用についてお伝えしましたが、日本国内のIT人材不足はいまだ解消されていません。日本におけるDX領域の開発は急務ですが、依然としてレガシーシステムは稼働しており、メンテナンスや運用、開発のための人材が必要です。 しかし、日本のIT人材絶対数の不足もさることながら、日本国内の若いエンジニアにはPythonなどの言語が人気で、レガシーシステムなどに必要なCOBOLなどの昔ながらの言語は不人気という状態です。このような既存システム、基盤システムなどのレガシーシステムにおける人材不足面を解消するためにも、オフショア開発が活用されています。 オフショア開発導入はDX人材不足解消と育成につながる DX時代の人材戦略「リスキリング」の重要性 日本の近年、グローバルな競争が激化する中、日本企業はさまざまな手段を活用して競争力を高めることが求められています。日本のデジタル競争力を高めるためにはDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が叫ばれるものの、国内のITエンジニアやDX人材などの人材不足が大きな課題となっています。 日本のITエンジニアやDX人材不足は、急速なデジタル化やテクノロジーの進展に追いつくことが難しくなっています。このような状況下で、企業は従業員のスキルアップを重視し、最新の技術やトレンドに対応でき、変化するビジネス環境に適応できる人材を育てる必要性があります。こうしたことから、日本のITエンジニアやDX人材不足を解消するため、「リスキリング」が注目されています。 リスキリングとオフショア開発の関係性 オフショア開発は、日本のITエンジニアにとって新たなスキル向上とグローバルな成長の機会を提供する重要な手段となっています。 オフショア開発を活用することで、日本のITエンジニアはグローバルなプロジェクト経験を積むことができます。異なる国や地域の開発チームと協力することで、異文化環境におけるプロジェクト管理やコミュニケーションスキルが向上し、柔軟性や適応力を高めることができるでしょう。 そして、オフショア開発では、リモートコミュニケーションが主要な手段となります。ITエンジニアは遠隔地の開発チームと円滑にコミュニケーションを取るため、効果的なコミュニケーションスキルを磨く必要があります。適切なコミュニケーションにより、要件の理解や問題解決がスムーズに行われ、プロジェクトの成功につなげることができます。 さらに、オフショア開発によって最新の技術トレンドにアクセスする機会が増えます。世界中の開発者と協力してプロジェクトを進めることで、新しい技術や開発手法を学び、実践する機会が増えるでしょう。これにより、ITエンジニアの技術力や知識が向上し、自己成長が促進されることが期待されます。 また、オフショア開発には異なる地域の開発チームと協力することが求められます。これにより、ITエンジニアはチームワークとリーダーシップのスキルを発展させる機会を得ます。プロジェクトの成功に向けて指導力を発揮し、チームと協力して目標を達成する経験を積むことで、エンジニアとしての成長が促進されるでしょう。 こうしたことから、オフショア開発の経験は、日本のITエンジニアのスキルアップとグローバルな視点の向上に寄与すると言えます。グローバルなプロジェクト経験、コミュニケーションスキルの向上、最新技術の習得、チームワークとリーダーシップの発展といった点に着目することで、オフショア開発がエンジニアのキャリアにプラスの影響を与えることが期待されます。 オフショア開発とリスキリングの組み合わせは、企業のデジタル化戦略を推進する上で有益なシナジーを生み出すことが期待できます。 無料eBookのダウンロード 保存版 オフショア開発入門ガイド2023 オフショア開発を始める前の気になる疑問を解決!オフショア開発を検討中の方に向けて、オフショア開発の基本的な知識から注意点までを解説します。 今すぐダウンロード(無料)