日本企業が抱えるシステム開発の課題と今後のオフショア開発の方向性とは
日本企業のシステム開発は、IT人材不足と開発コスト増加が大きな問題となっています。急速なデジタル化とテクノロジーの進化に追いつくための、適切なITエンジニアやデジタル専門家の確保が難しく、開発コストも上昇しています。この課題に対し、「リスキリング」と「オフショア開発」という解決策が注目されています。企業は、内部のスキル向上とグローバル競争への対応を目指し、オフショア開発を 人材戦略に活用することで、人材不足を克服し、競争力を高める展望が期待されています。
オフショア開発の現状
DX人材不足の解決策としても注目されている、オフショア開発の現状を紹介します。
オフショア開発の規模が拡大している
経済産業省が2019年に発表した「IT人材育成の状況等について」によると、日本では2030年までに約59万人のIT人材が不足すると予想しています。今後も優秀なエンジニアを確保するために、オフショア開発を導入する企業の増加が考えられるでしょう。
DX推進やシステム開発の需要拡大により、日本でのオフショア開発の規模は拡大しています。独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の調べでは、日本のIT企業の約45.6%がオフショア開発を導入している、またはなんらかの形でオフショア開発に関与しているというデータがあります。
中小企業の委託元が増加している
海外進出のため費用と手間がかかり、少し前まではオフショア開発を導入しているのは大企業が多い傾向でした。しかし、最近ではグローバル化が進んでいることや、オフショア開発のノウハウが蓄積されたことによって中小企業の委託元が増加しています。
委託先国としてベトナムが人気
オフショア開発の委託先といえば、かつては中国やインドが人気国でした。近年では人件費が安く、優れた人材が豊富で、真面目な国民性などの要因を持ったベトナムが人気を集めています。
オフショア開発の希望委託先国について、オフショア開発.comがまとめたデータ(2020年1月〜12月に「オフショア開発.com」に寄せられた開発相談の希望委託先国別ランキングより)によると、1位がベトナムで、全体に占める割合は52%でした。
日本企業のオフショア開発導入の目的の変化
昨今、日本企業のオフショア開発導入の目的が変化してきています。以前は、コスト削減が主な目的でしたが、企業のデジタル競争力を高めるDX人材不足の対応策や、品質の確保といった目的にシフトしています。
NFT、DeFi、Web3.0、メタバースなどの新しい風潮
スイスのIMDが発表している「世界デジタル競争力ランキング」で日本は2020年に63カ国中27位という結果で、2021年には28位と順位を下げています。日本の順位は年々デジタル競争力を高めている香港や韓国、台湾と比べると対象的な数値となっています。
日本企業のデジタル化が世界各国の企業より遅れている理由の一つに、DX人材不足が挙げられます。そのため日本で不足しているAI、IoT、ブロックチェーンなどの先端技術スキルを持った人材を補うために、オフショア開発導入に向けての動きが増しているのです。さらなる企業のオフショア開発導入の加速に向けた背景にあるのが「NFT」「DeFi」「Web3.0」「メタバース」などの新しい風潮です。
ブロックチェーン技術をベースにして唯一無二の「一点もの」を生み出せるトークンである「NFT」、金融エコシステムの「DeFi」、仮想空間の「メタバース」など、これらはIT業界やテック業界を越えてさまざまな業界で注目を集めています。これらNFT、DeFi、メタバースなどのブロックチェーン技術をベースにした各カテゴリーを包括する位置付けとなるのが「Web3.0」です。
Web3.0は「分散型のWeb」を意味し、巨大IT企業による支配からのデータの解放を目的としています。世界各国がWeb3.0推進への取り組みが進む中、日本の出遅れを防ぐため日本政府が2022年6月に経済財政運営の指針である「骨太の方針」にWeb3.0の環境設備を明記しました。日本のグローバルな競争力を高めるには、Web3.0のブロックチェーン技術は欠かせません。
オフショア開発における今後の方向性
こうしたことを踏まえ、日本企業のオフショア開発導の今後の方向性は次のようなことが考えられます。
オフショアの役割を下流工程から上流工程まで拡大する
実は、オフショア開発の対象業務は、国によって異なります。例えば、米国企業では、上流工程から下流工程まで任せるのが一般的です。米国のユーザー企業は多数のITエンジニアを採用し、社内のIT部門に配置しているため、基本的には自社システムの開発から運用まで内製化するのが主流です。これは、社内技術やノウハウを社外に流出させないためでもあり、日本のように自社のシステム開発を外部のSI企業に全てお任せするということはありません。
オフショア開発などの外部リソースを活用するのは社内でリソース不足が発生した場合です。また、ユーザー企業にとって開発プロジェクトが完了したら終わりということはなく、リリース後にブラッシュアップしていくことを前提として、アジャイル開発でによってサービスインまでの期間を短縮できるのが特徴ですなどので補うというにで、自社のエンジニアのスキルアップにつながっています。これまでの日本企業のオフショア開発では、海外の委託先には下流工程中心にまかせるのが一般的でした。
従来型の形態では、日本のエンジニアの技術スキルが低下する懸念もありつつも、日本企業が海外の企業と同じような導入形態にならないのは、顧客の要件定義が固まらないという課題があったからです。そこで、作業要領も含め日本での開発と同様に、要件定義を明確に行うことで課題の解消につながり、日本企業でも委託先に上流工程までまかせる動きが拡大しています。これにより日本のDX人材強化も期待できるでしょう。
DX領域にシフト
従来、日本企業が海外の委託先にまかせていたのは、基幹システムや既存システムが中心でした。しかしながら、日本企業が変化の激しいビジネス環境の中で優位性を確立するには、デジタル競争力を高めることが急務となっています。DXによる事業改革が不可避となっている昨今、AI、IoTといったDX領域へと業務の委託内容がシフトしています。
ここでDX領域を委託する際に課題に挙がるのが、海外の委託先にDX領域の開発をまかせてしまうため、自社のエンジニアのスキルアップにつながらないことです。課題の解決策として、上流工程、下流工程の分担を明確にしているウォーターフォール開発ではなく、チームを組んで海外のエンジニアと一緒に要件定義、設計、開発、テストといった開発工程を行うアジャイル開発の活用があります。
日本のエンジニアにとっても、海外の優秀なエンジニアと一緒のチームで働くことで、スキルアップにつながることが期待できます。大手のオフショア開発企業や弊社のエンジニアの技術レベルは高く、DX時代にふさわしい優秀な人材を確保することも可能です。
人材不足面でのオフショア開発活用
上記の1、2では日本のDX人材、エンジニアのスキルアップに向けたオフショア開発企業の活用についてお伝えしましたが、日本国内のIT人材不足はいまだ解消されていません。日本におけるDX領域の開発は急務ですが、依然としてレガシーシステムは稼働しており、メンテナンスや運用、開発のための人材が必要です。
しかし、日本のIT人材絶対数の不足もさることながら、日本国内の若いエンジニアにはPythonなどの言語が人気で、レガシーシステムなどに必要なCOBOLなどの昔ながらの言語は不人気という状態です。このような既存システム、基盤システムなどのレガシーシステムにおける人材不足面を解消するためにも、オフショア開発が活用されています。
オフショア開発導入はDX人材不足解消と育成につながる
DX時代の人材戦略「リスキリング」の重要性
日本の近年、グローバルな競争が激化する中、日本企業はさまざまな手段を活用して競争力を高めることが求められています。日本のデジタル競争力を高めるためにはDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が叫ばれるものの、国内のITエンジニアやDX人材などの人材不足が大きな課題となっています。
日本のITエンジニアやDX人材不足は、急速なデジタル化やテクノロジーの進展に追いつくことが難しくなっています。このような状況下で、企業は従業員のスキルアップを重視し、最新の技術やトレンドに対応でき、変化するビジネス環境に適応できる人材を育てる必要性があります。こうしたことから、日本のITエンジニアやDX人材不足を解消するため、「リスキリング」が注目されています。
リスキリングとオフショア開発の関係性
オフショア開発は、日本のITエンジニアにとって新たなスキル向上とグローバルな成長の機会を提供する重要な手段となっています。
オフショア開発を活用することで、日本のITエンジニアはグローバルなプロジェクト経験を積むことができます。異なる国や地域の開発チームと協力することで、異文化環境におけるプロジェクト管理やコミュニケーションスキルが向上し、柔軟性や適応力を高めることができるでしょう。
そして、オフショア開発では、リモートコミュニケーションが主要な手段となります。ITエンジニアは遠隔地の開発チームと円滑にコミュニケーションを取るため、効果的なコミュニケーションスキルを磨く必要があります。適切なコミュニケーションにより、要件の理解や問題解決がスムーズに行われ、プロジェクトの成功につなげることができます。
さらに、オフショア開発によって最新の技術トレンドにアクセスする機会が増えます。世界中の開発者と協力してプロジェクトを進めることで、新しい技術や開発手法を学び、実践する機会が増えるでしょう。これにより、ITエンジニアの技術力や知識が向上し、自己成長が促進されることが期待されます。
また、オフショア開発には異なる地域の開発チームと協力することが求められます。これにより、ITエンジニアはチームワークとリーダーシップのスキルを発展させる機会を得ます。プロジェクトの成功に向けて指導力を発揮し、チームと協力して目標を達成する経験を積むことで、エンジニアとしての成長が促進されるでしょう。
こうしたことから、オフショア開発の経験は、日本のITエンジニアのスキルアップとグローバルな視点の向上に寄与すると言えます。グローバルなプロジェクト経験、コミュニケーションスキルの向上、最新技術の習得、チームワークとリーダーシップの発展といった点に着目することで、オフショア開発がエンジニアのキャリアにプラスの影響を与えることが期待されます。
オフショア開発とリスキリングの組み合わせは、企業のデジタル化戦略を推進する上で有益なシナジーを生み出すことが期待できます。
無料eBookのダウンロード
保存版
オフショア開発入門ガイド2023
オフショア開発を始める前の気になる疑問を解決!オフショア開発を検討中の方に向けて、オフショア開発の基本的な知識から注意点までを解説します。
More From オフショア開発