February 28, 2023

失敗事例から学ぶ、オフショア開発成功への9つのヒント

昨今、ITシステム開発の現場では、オフショア開発という選択肢は一般的となりました。しかし、中には当初に想い描いた通りにはプロジェクトを進めることができなかったという声も聞こえてきます。そこで、本記事では、オフショア開発の失敗事例から学ぶ、失敗原因や成功へのヒントにについて紹介します。

オフショア開発で陥りやすい失敗事例

まずは、オフショア開発での失敗事例としてよく耳にする話題をいくつかご紹介します。

失敗事例1:仕様伝達に失敗し、納期が遅延してしまった

発注元の担当者は、発注先のオフショア開発会社に日本語ができるブリッジSEをアサインしてもらい、仕様と作業内容を文書にまとめてブリッジSEとミーティングを行って説明した。

ミーティングは日本語で行ったが、ブリッジSEも要求をよく理解してくれているように見えたため、日本語のコミュニケーションでも問題ないと判断していた。その後の進捗状況の確認でも、ブリッジSEからの報告は常に「問題なし」という回答があり安心していた。

しかし、次第にブリッジSEから1日に数回の質問が毎日のように届くようになった。担当者はその質問への回答作業に追われる日々となってしまい、レビューによる品質確認を行う時間を確保することができぬまま納期を迎えてしまった。

これは、オフショア開発会社への仕様の伝達がうまくいかずに作業の遅延が発生してしまったケースです。原因は、発注先の窓口となるブリッジSEとの日本語による意思疎通ができたため、仕様伝達のハードルは低かったと思い込んでしまったことにあります。

しかし、発注先のオフショア開発会社の窓口となるすべての人が技術面について知識を持っているとは限りません。 中には、主に通訳を役割とするコミュニケーターと呼ばれるべき人材にブリッジSEという肩書きを与えているオフショア開発会社も存在します。

このような失敗を回避するためには、窓口となるブリッジSEの日本語の言語能力の確認にとどまらず、そのブリッジSEの職務範囲や職能まで確認しておくことが大切です。

もし、オフショア会社の窓口担当者の技術的な内容の理解度に不安を感じる場合には、そのコミュニケーターを介して仕様伝達を行うのではなく、直接現地のSEと英語でやりとりを行う方がお互いの理解度を確認しながら進めることができるでしょう。その方が結果的には二度手間の発生を抑制でき、間接コストも削減することができるでしょう。

失敗事例2:度重なる仕様変更により、コストが増大してしまった

全体の仕様が確定しておらず、一部の仕様は暫定的なものとして見積を行い、そのまま見切り発車で発注した。

暫定部分は、発注後に五月雨式に仕様伝達を行ったものの、その後も仕様変更が繰り返され曖昧な仕様が残ったままだったため、ドキュメント作成やメールやチャットなどの仕様伝達の工数が増大した。

また、開発現場でも仕様の混乱や手戻りが発生し、当然スケジュールも大幅に遅延して収拾がつかなくなった。そのため、開発途中でブリッジSEと仕様確認の仕切り直しが必要となった。

その結果、コミュニケーションと開発の工数が増大し、最終的には、見積金額を大幅に超えてしまった。

これは、仕様が曖昧なまま発注したうえに仕様変更を繰り返した結果、コストと納期がオーバーしてしまったケースです。国内開発の発注においても発生し得るような例ですが、走りながら徐々に要求仕様を決めていくというやり方は、典型的な日本型の開発アプローチと言えます。

オフショア開発をこのような国内開発の感覚で行ってしまうと、信頼関係にひびが入ってしまい想像以上にトラブルを拡大させてしまう危険性があります。信頼関係がなければプロジェクトが失敗する確率は限りなく高くなるでしょう。そうなれば、金銭面でもトラブルに発展しまう可能性があります。

仕様を変更すること自体は問題ないのですが、問題は仕様変更をスムーズに進めるための段取りとコミュニケーションにあると考えられます。オフショア開発ベンダー側の状況を考慮して伝達することが大切です。

失敗事例3:日本語での意思疎通の失敗

ある過去に一度、開発を依頼したことがあるオフショア開発会社に、新規のプロジェクトを依頼した。初めて発注した際は、日本語でのコミュニケーションに多少の不安を抱いていたものの、アサインされたブリッジSEがとても優秀で、日本語スキルや技術レベルは事前の説明通りにレベルが高く、プロジェクトは無事成功を収める事ができた。

そこで、同じオフショア開発会社に別のプロジェクトを追加発注したところ、アサインされたブリッジSEの日本語スキルが低く、前回のブリッジSEと比較すると大幅に劣っていた。

事前に、コミュニケーション言語は日本語で行うとの取り決めていたものの、メールで質問を受け付けても一体何を伝えたいのか理解できないようなことがかった。そこで英文でのやりとりも試してみたが英語もさほど得意ではないらしく、結局、意思疎通はなかなか改善せず苦労した。

オフショア開発会社からの事前説明での「日本語コミュニケーションが可能な優秀な技術者が在籍している」との話に期待したところ、その事前期待が結果と異なっていて失敗したケースです。

たしかに、最初のプロジェクトにアサインされたブリッジSEは期待以上の能力を発揮してくれたため、次のプロジェクトでも期待するのは自然なことです。

初めての取引の際は、どこのオフショア開発会社もエース級の人材をアサインしてくるとうのはよくあることです。とはいえ、そのように優秀な人材が社内に多数在籍していて、発注者が希望するタイミングでいつでもアサインできるかどうかはまた別の話です。

このケースでは、エース級の人材は少数しか在籍していなかったり、または優秀な人材は別のプロジェクトに参加していて自社の案件にはアサインできなかったのかもしません。

顧客の要望に応じて、最適な人材を安定的にアサインできるかどうかは、オフショア開発会社それぞれの事情によって大きく異なります。特に、人材の豊富さは事業規模が大きいオフショア開発会社の方が有利でしょうし、また特定分野の人材であれば、小規模でもその分野に専門特化したオフショア開発会社なら最適な人材を確保できるかもしれません。

なお、日本市場に注力して事業を展開しているオフショア開発会社では、社内で日本語教育を行っていることは珍しくありません。しかし、その教育内容や方法も企業にとってさまざまで、営業やブリッジSEに限定して教育している場合もあれば、その他のエンジニアも含めて行う場合もあります。

また、日本語認定資格の取得を奨励し、資格取得手当てなどの制度を設けている企業もありますし、採用段階で選考基準として日本語のスキルレベルの高い人材や、日本国内でのビジネス経験や日本企業とのプロジェクト経験がある人材を多く採用しているケースもあります。オフショア開発会社選びの際には、そのような日本語教育のへの取組み状況状況も確認しておくとよいでしょう。

オフショア開発を成功に導くための9つのヒント

先述の陥りがちなオフショア開発での失敗事例のような問題は、実は日本国内での日本人エンジニアによる開発でも起こり得ることです。オフショア開発の現場では、とりわけ言語、文化、国民性の違いによるコミュニケーションのギャップが問題を生じさせる原因となる場合が多いです。そこで、ここではオフショア開発での失敗を回避し、開発プロジェクトを成功させへと導くための9つのポイントを紹介します。

1. コミュニケーション言語のスキルレベルを確認する

日本語や英語など、オフショア開発会社とのコミュニケーション言語を取り決める際には、コミュニケーションに支障がない程度の言語スキルを持っているかを事前に確認しましょう。

例えば、コミュニケーション言語を日本語にすると取り決めた場合、そのスキルレベルを客観的に把握する一つの目安としては日本語検定試験(JLPT)があります。日本語能力試験は、日本国内および海外で日本語を母語としない人を対象として日本語の能力を測定し、認定することを目的として行う試験です。試験はN1からN5レベルまでの5段階に分けられており、N1は最も難易度が高くなっています。

N1は幅広い場面で使われる日本語を理解することができるレベルで、N2は日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができるレベルとされています。そうしたことから、外国人を採用する企業では、在留資格・ビザ取得の観点からもN1〜N2を選考基準としている場合が多いようです。

N1は日本語ネイティブでも満点を取るのが難しいレベルの試験と言われていますので、N1保持者であればビジネスシーンでの活躍を期待できるでしょう。しかし、必ずしもすべてのエンジニアがN1レベルを取得している必要はなく、担当業務に合わせて日本語能力がどの程度必要なのかを基準とするのがよいでしょう。オフショア開発の場合では、ブリッジSEの日本語能力は重要ですが、オフショア国現地で働くエンジニアには必ずしも日本語スキルは必要とされません。

なお、日本語能力試験の問題は文章読解と聴解のみのため、書く、話す、といった能力は測ることはできません。そのため、ブリッジSEをアサインする際には、面接やディスカッション、メールのやりとりなどを取り入れると良いでしょう。

2. 日本との文化や国民性の違いを認識し、明確に意思表示する

日本と海外では、考え方や仕事の進め方も異なります。日本では、物事をこと細かく伝えなくても相手は当然のごとく察してくれるだろうと期待してしまいがちです。しかし、海外では、相手に明確な意思表示をしなければ伝わらないコミュニケーション文化を持つの国の方が多いです。むしろ、相手に繊細かつ高度な感性を求める日本式コミュニケーションの方がガラパゴス的と言えるかもしれません。

こうした文化や国民性の違いによって意思疎通や相互理解がうまくいかなくなってしまうと、結果として品質低下や手戻りが発生してしまうことがあります。

本側から物事を依頼する時は、目的(なぜやるのか)、スコープ(何をやるのか)、タイム(いつまでに必要か)、コスト(いくら以内でやるのか)を可視化してプロジェクトの目的を一致させ、認識の食い違いを防止することが大切です。

また、開発先の文化や国民性を理解しておくと、誤解や思い違いを少なくできます。時にはやり方を日本式に合わせてもらうように強制するばかりではなく、お互いに文化が違う国であることを理解し歩み寄る姿勢も大切です。

3. 情報共有や取り決めは、可能な限り文書化する

日本では、話し手と聞き手の間に共有されていることが多いため、行間を読み、暗黙的なコミュニケーションが成立しやすい文化といえます。また、日本では会議の場での共有や明確化をすることが多くなりますが、口頭による伝達や暗黙知の共有が含まれるため文書化しにくかったり、伝達する内容が多く労力がかかるという理由から、文書化しないケースが度々見られます。

一方、海外では、共有する情報や経験が少ないため、文章や図解、数値などによって、誰が見ても理解できるような形式で客観的に表現された形式知によるコミュニケーションが行われること多々あります。これは、個人主義的な文化の国ほど強くなえる傾向が見られます。そのため、母国語が異なる国のメンバーと日本語で業務を進めるオフショアの場合には、仕様等を確実に文書化してデータベースで共有するのが望ましいでしょう。

過去にオフショアで失敗を経験した日本企業による教育指導的な役割によって、日本企業とのプロジェクト経験が多いオフショア開発会社ほどそのような体制が整っています。こうした取り組みは、転職率の高いオフショア開発の課題をカバーするためにも有効です。

また、口約束で決まったと思っていたことが後になって変更となり、問題になることがあります。決めごとは合意と承認があって成立するものですので、可能な限り文書化して相互に承認ルールを確認し徹底することが大切です。

4. 仕様変更と品質レベルに関する考え方の違いを意識する

日本では、度重なる仕様変更が生じても、それに対応することが当然であると考えられがちです。一方、オフショア開発では、契約締結後に仕様変更を行うことは一般的とは言えません。そのため、仕様変更を巡ってはトラブルが発生する可能性があります。

これはオフショア開発の場合に限りませんが、特に海外ベンダーに開発を依頼する場合は、要件定義書や仕様書の内容を明確に記載することが大変重要です。表現されない要件はシステムとして実現されません。

日本企業同士では通じる「伝えなくても相手が理解してくれるだろう」という暗黙の了解は海外では通用しません。それどころか「行間を読め」「そんなことは常識」「言った言わない」などの表現されない要件はトラブルの元になります。また、言葉にしたことがそのままの意味として理解されてしまうことが多いので、曖昧さや複数の意味として解釈できるような表現は避けることが賢明です。また「今までと同じ」というような伝え方も避けるべきでしょう。

要件定義は開発全体の成否を左右する重要な工程です。曖昧な要件のまま開発をスタートさせたり、要件を先送りしたりすることは、プロジェクトの失敗リスクが高まってしまい大変危険です。せっかくコスト削減できる予定であたったものが、かえって時間や工数が増えてコスト高になってしまう可能性もあります。

そうしたリスクを回避するためにも、システム機能要件のみならず、性能、信頼性、セキュリティ、移行・運用方法などの非機能要件、既存システム接続要件、プロジェクト特有の制約条件、将来を見込んだ稼働環境をしっかりと定めベンダーと綿密にすりあわせしておきましょう。数値化できる要件はできるだけ数値化しましょう。

かつての日本企業によるオフショア開発は、詳細設計以降のプログラム作成、単体テスト、結合テストまでの下流領域のみ担当するのが主流でした。しかし、近年では、ベトナムなどにおいて経験があり優秀なエンジニアを確保できるオフショア開発会社や、日本人PMやSEが在籍しているベンダーにおいては、上流から下流工程まで一気通貫で対応ができる企業も増えています。もし、要件定義書の作成が困難な場合には、そのような上流工程から対応可能なベンダーを選定するとよいでしょう。

なお、オフショア開発でもラボ型開発であれば、要件や仕様があいまいな状態なままで開発を開始し、短期間で改修を繰り返しながら運用することは可能です。アジャイル開発、スクラムなどといった場合でも、オフショアのラボ型開発が数多く活用されています。

5. 事前にレビューやテストに関する指針を示し、開発の初期段階でレビューする

念を入れて仕様書を作成しても、言語の違い、慣習や商習慣の違いから、発注元の意図を正確に伝えられていないことも想定しておく必要があります。これに対処するため、発注元を交えて早期にレビューすることが有効です。

このレビューは、早い段階で行うことがポイントです。受注側の設計書がまだ作成の途中でも、とにかく早めにレビューしましょう。早期にレビューする狙いは、いわゆる「ボタンのかけ違い」を早めに検出して軌道修正することです。最初に大きな認識違いがあったり、ソフトウェアのアーキテクチャに大きな考慮モレがあったりしたとしても、早期の段階であれば、手戻りは最小限で済みます。

この取り組みの狙いは、欠陥を見つけ出すことよりも、むしろ軌道修正を早期に施すことで「鉄則:バグを作り込まないで最初から正しく実装する」ことを狙ったものです。

6. 受注側のレビュー計画とテスト計画をレビューし、計画どおりに行われることを見届ける

品質レベルについて、どこまでの品質を確保するのかに関して考えの差があります。発注する際には、レビューやテストに関する指針を具体的に提示しておくべきでしょう。

受け入れテストはあくまでもサンプリングになるケースが多いので、受け入れテストの前に、受注側で必要十分なレビューやテストが行われることが必要です。

受注側でどんなレビューやテストを実施してもらうか、指針を発注元で示しておき、それに沿って受注側で具体的な計画に落とし込んでもらいましょう。受注側と日本とで品質に関する捉え方が異なることを受け、レビューやテストの観点・範囲に、発注元の要望を受注側に予め伝えておくのが無難です。例えば、異常ケースはどこまで想定してレビューしておくか、といったものが挙げられます。

また、計画倒れになってしまったり、表面的な取り組みになってしまったりしないように、レビューやテストが計画どおりに実施されているか、発注元で定期的に見届けるようにしましょう。

この取り組みは、「鉄則:作り込んだバグは可能な限り早い段階で検出して修正する」ことを狙ったものです。

7. 属人的な進め方をせず、仕組み化する

国内での開発でも言えることですが、「その人(担当者)しか分からない」という属人的なプロジェクトの進め方では、継続的に高い品質のサービスを作ることは難しくなります。

開発を行っていくうえで、コーディング規約や納品物の仕様など、絶対に守ってもらいたいと考えていることは、現地のブリッジSEと開発メンバーに背景含めて伝達することはもちろん、「担当者を複数配置する」、「社内Wikiやチェックリストなどの情報共有ドキュメントを作成する」、「ツールを活用してオープンな場でコミュニケーションを行う」など、仕組みでカバーするようにしましょう。

こうした属人化を解消する取り組みは、継続していくとチーム内で開発に対する意識や観点が揃っていき、コミュニケーションロスや手戻りが少なくなります。導入当初は効率が悪いと感じるかもしれませんが、結果的に数ヶ月後には以前よりも効率的に進行できるようになるはずです。

8. 綿密なコミュニケーションをとる

オフショア開発を成功させるうえで最も重要なことは、綿密なコミュニケーションです。コミュニケーションをとることで信頼関係が生まれやすくなりますし、またプロジェクト内での共通で理解できる言語を決めておくと、お互いの認識が一致しやすくなります。

また、ベトナムなどのオフショア開発会社には日本語や英語でのコミュニケーションが可能なブリッジ人材が多いですが、日本語や英語を母国語とせず第2、第3言語とする国の場合、言語能力は人によってばらつきがあります。以下の点に注意することにより、コミュニケーションロスを減らすことができます。

(1) わかりやすい日本語(英語)で伝える

言葉の伝達方法を工夫すると、外国人にも理解してもらいやすくなります。例えば、1つの文章には1つのメッセージだけを込めて表現することを心がけてください。これを行うだけでも文章が簡潔になり、とても理解してもらいやすくなります。

また、1つの文章の中で否定する言葉を2回使用して肯定を示す二重否定なども避けましょう。例えば、「追加できないわけではない」などという表現は避け「追加できる」というように簡潔な肯定文で伝えましょう。作業指示などは箇条書きにして順番をつけてリスト化することなども有効です。

その他、た複数の意味を持ったり日本独特の曖昧な表現は避ける、カタカナ英語や擬音・擬態語は避けるのが無難です。

(2) コミュニケーションツールやタスク管理ツールを活用する

依頼側と開発側の2者間だけのメールやインターネット通話の場合、コミュニケーションが可視化されません。しかし、slackやchatworkのようなチャットツールを活用することで、チームメンバー間でチャットのやり取りを可視化することができるようになり、伝達した情報の理解度の把握や認識のずれが発生した場合の検証などが可能になります。

また、地理的に離れた相手と文章だけのやりとりだけでは冷たいコミュニケーションになりがちですが、チャットツールを使うことで、相手の顔のアイコンが表示されたり、絵文字を利用したりすることで円滑なコミュニケーションに役立ちます。

ビデオ会議ツールも有効です。ドキュメント画面を共有しながら説明したり理解度を確認する上で役立つだけでなく、言葉を聞いているだけの状況よりも、相手の顔の表情を見ることができ、伝えたいことの伝達度をうかがい知ることができます。

(3) 開発プロジェクトの大切な仲間というマインドセットを持つ

少なくとも週1回はオンラインでミーティングを実施するなど、定期的なコミュニケーションをとることが必要です。ミーティングでは口頭のみではなく、形に残るように会話の内容をテキスト化することで認識の齟齬が生まれにくくなります。

また、たまには現地へ出張して、開発チームのメンバーと直接会ってコミュニケーションする機会を設けることも有効です。一緒に食事したり雑談したりすることは業務とは無関係ではありますが、仲間意識が芽生え、お互い気軽に声を掛け合える関係性を構築できるようになれば、目標意識の共有化や役割の明確化、また価値観の相互理解に役立つはずです。

9. 進捗状況をこまめに確認する

進捗状況をリアルタイムで確認できれば、失敗のリスクを低く抑えてオフショア開発を成功に導くことができます。プロジェクト進行の管理については、RedmineやBacklog、その他のプロジェクト管理ツールやドキュメント管理ツールを活用しましょう。

プロジェクトの規模によっては、ブリッジSEが複数におよびますし、タスクが埋もれてしまうこともあります。誰がどのタスクを持っているか、進捗状況はどうか、 漏れはないか、バグ管理などを可視化し即座に確認してフォローできるようなツールの活用は大変有効です。

また、各エンジニアにタスクの進捗状況や明日の予定タスクなどを、毎日報告してもらえるように事前にルール化しておくとよいでしょう。報告をする際に使用するツールや、報告の仕方なども事前にすり合わせをしておきましょう。進捗状況をこまめに確認することによって、オフショア開発の各メンバーの抱える仕事量やキャパシティを把握できれば、追加で割り当てることができる仕事量を見い出してタスクをチーム全体に効率よく分配することもできるでしょう。

プロジェクト管理ツール、ドキュメント管理ツールなどを使って随時確認できるようにしておきましょう。打合せや毎日の報告をする際の使用ツール、要件の伝え方や報告の頻度など、事前にすり合わせをしておくと開発がスムーズに進みやすくなります。

事前準備が失敗を避け、オフショア開発を成功へと導く

オフショア開発はIT人材の確保やコスト削減など、いろいろなメリットがありますが、「開発先の企業を選んですべて丸投げすればよい」といった安易な考え方ではプロジェクトは失敗します。

日本とは習慣や文化も違う国とプロジェクトを進めるため、明確な要件定義、綿密なコミュニケーションや慎重に進捗管理するなど、発注側もしっかりとしたプロジェクト管理が必要です。

また、はじめてのオフショア開発を進める場合は、実績がある会社や自社のプロジェクトに合った開発先を選ぶことが大切でしょう。

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March 10, 2025

Rikkeisoft、全社的なAI導入を本格始動

2025年3月、創立13周年を迎えたRikkeisoftは業務効率の向上とさらなるサービス価値の強化を目指し、全社的なAI技術の導入を本格的に開始しました。2025年3月5日には、「2025年 Rikkeisoft AIプログラム キックオフイベント」を開催し、AI導入の方針を発表するとともに、社員がAIを活用しながら業務を最適化するためのロードマップを示しました。 本記事では、企業がAIを導入すべき理由、RikkeisoftのAI戦略、2025年AIプログラムの具体的な内容、そしてAI導入が社員や会社の成長に与える影響について詳しく解説します。  AIの歴史と今 AIの進化と現状—なぜ今、企業はAIを導入すべきなのか? AIの歴史と進化—技術革新がもたらした転換点 AIの概念は1950年代から存在していましたが、実際に私たちの生活に大きな影響を与え始めたのはここ10年ほどのことです。特に2010年代以降のAI技術の進化が、企業におけるAI活用を現実のものとしました。  2011年:AppleのSiriが登場—AIが身近な存在に AppleがiPhoneに搭載した音声アシスタント「Siri」は、AIが日常生活に浸透する第一歩となりました。これにより、音声認識技術の実用化が加速し、AIがビジネスや個人向けサービスに取り入れられるきっかけとなりました。  2022年:ChatGPTの登場—AIが対話型へ進化 OpenAIが発表した「ChatGPT」は、AIの可能性を大きく広げました。従来のAIは特定のタスクに特化したものが多かったのに対し、ChatGPTは自然言語処理(NLP)技術の飛躍的向上により、幅広い分野で活用可能になりました。  2024年:ChatGPTがSiriと統合—AIがより高度で直感的なものに 2024年、AppleはChatGPTをSiriに統合し、ユーザーの体験を大幅に向上させました。これにより、AIが人間のような会話を理解し、適切に応答する能力が劇的に向上し、ビジネスシーンでの活用も急速に進みました。  このように、AI技術はわずか十数年で研究レベルから実用化へ、そして企業の必須ツールへと進化しました。  AIは私たちの働き方や生活をどう変えているのか? AIの進化は、単なるテクノロジーの発展にとどまらず、私たちの働き方や生活を根本的に変えるインパクトを持っています。  AIがもたらす産業変革 現在、AIはすでに多くの業界で業務効率の向上や生産性の最適化を実現しています。  医療分野:AIが医療画像を解析し、病気の早期診断を支援  金融分野:AIが取引パターンを分析し、不正取引を検出  教育分野:個別学習プログラムの最適化により、生徒ごとに最適な教育を提供  農業分野:AIによる天候予測とデータ解析で作物の収穫量を最大化  自動運転技術:AIが交通状況をリアルタイム解析し、事故リスクを低減  IT業界におけるAIの活用 特にIT業界では、AIが開発プロセスを加速し、プログラマーの生産性向上に大きく貢献しています。  コードの自動生成:AIを活用したプログラミング支援ツール(例:GitHub Copilot)により、エンジニアの作業時間を50%以上削減  バグ検出の自動化:AIがエラーやセキュリティ脆弱性を瞬時に特定  テストの自動化:AIがテストケースを生成し、開発スピードを向上  こうした事例からもわかるように、AIはすでにさまざまな業界で業務の効率化と最適化を実現しており、企業にとって不可欠なツールとなっています。 なぜ今、企業はAIを導入すべきなのか? AI技術が進化し、活用の幅が広がる中、企業が今すぐAI導入に取り組むべき理由は次の3つに集約されます。  競争力の維持と市場での優位性確保 AIを活用する企業としない企業の間には、生産性やコスト削減の面で大きな差が生まれます。特にグローバル市場で競争力を維持するためには、AIの活用が必須です。  人材の生産性向上と業務効率化 AIはルーチン業務を自動化し、社員がより創造的な業務に集中できる環境を作ります。 これにより、社員の生産性が向上し、企業全体のパフォーマンスが最適化されます。 コスト削減と新たな成長機会の創出 AIを活用することで、業務の効率化によるコスト削減が可能になります。また、AIが生み出す新たなサービスや市場を活用することで、企業の成長機会が拡大します。  RikkeisoftのAI戦略—なぜ全社導入を決断したのか? AIはもはや選択肢ではなく、企業存続の必須要件 世界のIT市場では、AI技術を活用した企業とそうでない企業の間で、生産性や競争力に大きな差が生まれています。この流れの中で、Rikkeisoftが競争力を維持し、さらなる成長を遂げるためには、AIの全社的な導入が不可欠でした。具体的には、次の3つの要素がAI導入の決断を後押ししました。  1. 日本・米国・タイ・韓国市場の成長機会を活かすため Rikkeisoftは、日本・米国・タイ・韓国市場への事業拡大を進めており、これらの市場ではAIを活用したITソリューションへの需要が急速に高まっています。こうした市場の動向を踏まえ、RikkeisoftはAIを活用したサービスの強化を進め、グローバル市場での競争力を高める戦略を取ることを決定しました。  2. Rikkeisoft社員のAI活用ニーズの高まり Rikkeisoftの社内調査によると、多くの社員がAIを活用して業務効率を向上させたいと考えていることが分かりました。しかし、まだ十分にAIを活用できていない社員も多く、AI導入に対するサポートが求められています。  調査結果から分かった主なポイント: ・社員の80%以上がAIを業務に活用したいと回答 ・しかし、実際にAIツールを活用できている社員は50%未満  この結果を受け、RikkeisoftはAI導入に向けた教育プログラムや支援体制を強化し、すべての社員がAIを最大限に活用できる環境を整備することを決定しました。  3. AI導入により目指す姿—Rikkeisoftの未来像 Rikkeisoftは、AI導入を単なる業務効率化の手段と捉えるのではなく、企業の成長戦略の中核として位置づけています。AI導入によって、次のような未来像を実現することを目指しています。  全社員がAIを活用し、生産性を向上 ・ルーチン業務をAIが自動化し、社員はより価値の高い業務に集中できる ・プログラム開発の生産性が向上し、より高品質なサービス提供が可能に  Rikkeisoftのブランド価値向上と市場競争力の強化 ・AI導入を進めることで、IT業界におけるリーダー企業としての地位を確立 ・AIソリューションの提供により、顧客企業のDX推進を支援  2025年Rikkeisoft AIプログラムの概要 […]

February 13, 2025

オフショア開発の新潮流:チャイナリスクを避け、分散とリソース確保へ

近年、オフショア開発の目的は「コスト削減」から「リソース確保」へとシフトしています。特にチャイナリスクの高まりを受け、多くの企業が開発拠点の分散を進めています。  最新の「オフショア開発白書2024」によると、オフショア先としてベトナムが42%のシェアを獲得し、依然として最も人気のある国であることが明らかになりました。一方、中国は26%と2位を維持していますが、規制強化や単価上昇により新規発注の割合は減少傾向にあります。  本記事では、「オフショア開発白書2024」のデータを基に、チャイナリスクの現状、オフショア先分散の重要性、オフショア開発の最新トレンドについて解説します。  チャイナリスクの現状 「オフショア開発白書2024」によると、中国をオフショア先として活用する企業の割合は26%と依然として高いものの、近年さまざまなリスクが浮上しています。ここでは、企業が直面する具体的なチャイナリスクを整理します。  カントリーリスクの高まり 中国政府による規制強化や日中関係の悪化は、オフショア開発に大きな影響を与えています。特に以下の点がリスクとして指摘されています。  データセキュリティ規制の強化 近年、中国ではデータ管理に関する法律が厳格化され、国外とのデータのやり取りが制限されるケースが増えています。  ジオポリティクスの影響 米中対立の影響により、中国に拠点を置く企業が輸出規制や制裁の対象となるリスクが高まっています。  規制によるビジネス環境の不透明さ 突然の法律改正や政策変更が事業運営に影響を及ぼすことが懸念されています。 エンジニア単価の上昇 中国のプログラマーの平均人月単価は44.4万円と、ベトナムの39.4万円と比較して約12%高い水準となっています。さらに、シニアエンジニアやプロジェクトマネージャーの単価も高騰しており、特に高度技術分野(AI、ブロックチェーンなど)では、日本国内とほぼ同等、またはそれ以上のコストが発生するケースもあります。  中国には多くの優秀なエンジニアが存在し、先端技術(AI、クラウド、ブロックチェーン)の分野では依然として強みを持っています。しかし、これまで中国に開発を集中させていた企業は、カントリーリスクやコスト増により、開発の分散を進める必要性を感じています。「オフショア開発白書2024」によると、オフショア先の分散を検討している企業の割合は前年より増加しており、ベトナムやインド、フィリピンへのシフトが進んでいます。  最新のオフショア開発委託先ランキング 前章でも述べたように、中国のデータセキュリティ規制の強化や米中対立の影響、中国のエンジニア単価の上昇等の理由により、中国から他の国へ開発拠点を移行する企業が増加しています。  「オフショア開発白書2024」のランキングによると、2024年のオフショア開発委託先は以下のようになっています。  引用元:オフショア開発白書 2024年版 なぜベトナムがオフショア委託先として最適なのか ① コストパフォーマンスが高い ベトナムのプログラマーの平均人月単価は39.4万円と、中国より約12%安価です。シニアエンジニアやプロジェクトマネージャーの単価も、他のオフショア国と比べて競争力があります。 ② IT人材が豊富 ベトナムは国家としてIT人材の育成に力を入れており、エンジニアの供給が安定しています。日本語対応エンジニアの育成も進んでおり、日本市場向けの開発に強みを持っています。  ③ 日本との親和性が高い ベトナムは親日国であり、日本市場をターゲットにするIT企業が多いです。ブリッジSEの充実により、日本企業とのコミュニケーションもスムーズです。  ④ 開発分野の多様化 近年、ベトナムのオフショア開発は、従来のWebシステム開発やスマホアプリ開発に加え、AI・ブロックチェーン・クラウドなどの先端技術開発にも対応する企業が増えています。  ベトナム以外のオフショア開発候補として、インド、フィリピン、東欧諸国も注目されています。それおぞれの特徴は以下の通りです。  インド:  AI・ブロックチェーンなどの先端技術に強い。エンジニアのスキルレベルが高いが、プロジェクト管理が難しいことも。  フィリピン: 英語対応が可能で、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)やグローバル案件に適している。  東欧諸国: 高品質な開発が可能。欧米市場向けの案件が多いが、日本市場向けの経験が少ない。  オフショア開発の委託先を分散する重要性 近年、オフショア開発の戦略として「開発拠点の分散」が注目されています。ここでは、分散化が求められる理由と、具体的な分散戦略のポイントについて解説します。  1カ国依存のリスク オフショア開発の拠点を1カ国に集中させることは、ビジネスの継続性に大きなリスクをもたらします。  ①カントリーリスク 中国の規制強化、ミャンマーの政情不安、突然の法改正や貿易規制により、開発継続が困難になる可能性があります。  ②為替リスク 円安や現地通貨の変動によって、開発コストが大きく変動するリスクがあります。例えば、円安の影響で、中国の開発単価が前年比約10%上昇しました。  ③人材確保のリスク 特定の国でエンジニアの需給バランスが崩れると、採用競争が激化し、コスト増加につながります。  分散戦略のメリット ①事業継続性(BCP)の確保 特定の国で問題が発生しても、別の拠点で開発を継続できます。 例:ミャンマーの政情不安を受け、開発をベトナム・フィリピンへ分散する企業が増加。  ②コスト最適化 国ごとの単価差を活用し、コストパフォーマンスを最適化できます。 例:ベトナムでの基本開発 + インドでの高度技術開発 + フィリピンでのBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)などの組み合わせ。  ③技術・スキルの最適配置 国ごとの得意分野を活かし、開発効率を向上できます。 例:AI・ブロックチェーン開発はインド、モバイルアプリ開発はベトナム、サポート業務はフィリピンなど。  オフショア開発の分散化は、カントリーリスクやコスト上昇リスクを軽減し、安定した開発体制を構築するために不可欠な戦略です。多くの企業が中国依存を避け、ベトナムを中心に複数の国へ開発拠点を分散させる動きを加速させています。  特にベトナムは、コスト・技術・リソースのバランスが取れており、分散戦略の中心に適した国です。  オフショア開発の最新トレンド:コスト削減からリソース確保へ オフショア開発は従来「コスト削減」を最大の目的として活用されてきました。しかし、2023年から「開発リソースの確保」が主要な目的へと変化しています。  ここでは、その変化の背景と、今後のオフショア開発の方向性について解説します。  […]

February 12, 2025

ポストチャイナとベトナムの可能性 – (2)日本企業が新たな拠点を求める理由

本記事は2部構成の後編です。前編では、日本企業が直面しているチャイナリスクと米中貿易摩擦の影響について解説しました。後編では、日本企業が中国から他国へ拠点を移転する動向と、その中でも特に注目されているベトナムの優位性について詳しく見ていきます。 ▼前編の記事はこちら2025年、ポストチャイナとベトナムの可能性 ー (1)チャイナリスクと米中貿易摩擦の行方 日本企業の中国から他国への移転状況 近年、日本企業は中国から他国への生産拠点の移転を加速させています。この動きの背景には、チャイナリスクの高まりやコスト競争力の低下があり、企業は新たな展開先を模索しています。 事業展開が有望な国・地域ランキング 国際協力銀行(JBIC)が実施した「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」によると、今後3年程度の有望な事業展開先として、インドが3年連続で首位を維持し、ベトナムが2位となっています。一方で、中国は6位に順位を落とし、有望国としての中国離れが鮮明になっています。このランキングは、日本企業が中国から他国への移転を検討する際の指標となっており、特にインドとベトナムが注目されています。 日本企業の海外直接投資(FDI)動向:中国 vs ベトナム 本企業の海外直接投資の動向を見ると、ベトナムへの投資が増加傾向にあります。大和総研のレポート「ベトナムへの進出/ビジネス拡大の好機(2024/11 /20 )」(PDF)によると、2023年の日本の対ベトナム投資額は、対中国投資額の1.1倍に達しており、ベトナムへの投資選好の高まりが示されています。この傾向は、ベトナムが製造業の新たな拠点として注目されていることを反映しています。 日本企業の拠点移転動向(製造業・IT業) 製造業においては、人件費の上昇や地政学的リスクを背景に、中国からベトナムやインド、メキシコなどへの生産拠点の移転が進んでいます。一方で、IT業界では、ベトナムがオフショア開発の拠点として注目を集めています。ベトナムの若年層の豊富な労働力と技術力の向上が、IT業界の進出を後押ししています。 これらの動きは、企業がリスク分散とコスト競争力の確保を目指していることを示しています。中国からの移転先としては、ベトナム、インド、メキシコが有力な選択肢となっており、中でもベトナムは製造拠点と市場の両面での魅力が評価されています。 ベトナムの優位性と今後の展望 ベトナムの経済成長率と労働人口 ベトナムは近年、安定した経済成長を遂げています。ベトナム統計総局によると、2024年の実質GDP成長率(推計値)は前年比7.09%であり、1人当たりGDPは4,700ドル(前年より377ドル増)と推定されています。 労働人口に関しては、2023年にベトナムの人口は約1億300万人に達し、そのうち6,700万人以上が生産年齢人口(15~64歳)に該当します。平均年齢は31歳と若く、豊富な労働力が経済成長を支えています。 このような経済成長と若年層の豊富な労働力は、ベトナムが製造業やIT業界の新たな拠点として注目される要因となっています。 チャイナ・プラスワンの他の候補国に比べてベトナムが有利な点 チャイナ・プラスワン戦略において、ベトナムは他の候補国と比較していくつかの優位性を持っています。 まず、ベトナムの賃金水準は他の新興国と比較して依然として低く、豊富な労働力を有しています。これにより、低コストでの生産が可能となり、多くの企業が進出を検討する要因となっています。 次に、ベトナムは政治的に安定しており、外交リスクが小さいため、企業の進出先としての安心感があります。加えて、地理的にも中国と国境を接しており、中国のサプライチェーンとの連携が容易であることも大きなメリットとなっています。 また、ベトナムは積極的に貿易協定を締結しており、多くの貿易相手国と関税面での優遇措置を享受する環境にあります。これにより、輸出入のコストが抑えられ、企業にとっての競争力を高める要因となっています。 これらの要因により、ベトナムはチャイナ・プラスワンの候補地として他国よりも有利な位置にあると考えられます。 低賃金と豊富な労働力:ベトナムは他の新興国と比較して賃金が安く、豊富な労働力を有しています。 政治・外交リスクの低さ:ベトナムは政治的に安定しており、外交リスクも小さいため、企業の進出先として安心感があります。 地理的優位性:ベトナムは中国と国境を接しており、中国のサプライチェーンとの連携が容易です。 積極的な貿易協定の締結:ベトナムは多くの貿易協定を締結しており、輸出入における関税面での優遇を受けやすい環境にあります。 ポストチャイナ時代に向けた日本企業の新たな選択肢 日中関係の変化や米中貿易摩擦の影響を受け、日本企業の「ポストチャイナ」戦略は今後も続くと予想されます。その中で、ベトナムは製造業の生産拠点としてだけでなく、IT開発の拠点としても成長を続けています。 製造業の拠点移転に留まらず、ITオフショア開発を活用しながらDXを推進することで、日本企業の競争力強化が求められます。ベトナムは「生産」「市場」「IT開発」の3つの側面で、日本企業の成長を支える重要な拠点となる可能性が高いと考えられます。 日本企業のサプライチェーンは、大きな転換期を迎えています。地政学リスクやコストの上昇、貿易摩擦の影響により、中国への依存を見直す動きは不可避となりました。 その中で、ベトナムは製造業の新たな拠点としての競争力を高めるだけでなく、IT開発・デジタル市場の成長により、日本企業にとって多面的な魅力を持つ国へと変貌しつつあります。チャイナ・プラスワンの有力候補として、今後もその存在感を増していくことは間違いありません。製造・市場・IT開発の3つの軸で、新たな事業展開を模索する日本企業にとって、ベトナムは今、最も注目すべき国の一つといえるでしょう。 ▼前編の記事はこちら2025年、ポストチャイナとベトナムの可能性──チャイナリスクと米中貿易摩擦の行方 無料eBookのダウンロード チェックリストでわかる 失敗しないオフショア開発会社の選び方 オフショア開発会社選びの準備から開発開始まで、多様な角度からチェックポイントを網羅。チェックリストを活用して効率的な選定や基準作りに役立ちます。 今すぐダウンロード(無料) 無料eBookのダウンロード 保存版 オフショア開発入門ガイド オフショア開発を始める前の気になる疑問を解決!オフショア開発を検討中の方に向けて、オフショア開発の基本的な知識から注意点までを解説します。 今すぐダウンロード(無料)

September 9, 2024

医療業界におけるAIの活用事例

人材不足や過酷な労働環境という課題を抱える医療業界において、企業や医療機関はAIを積極的に導入することで診断精度の向上や労働環境の改善につなげています。本記事では、医療業界でAIの導入が求められる背景や、具体的な導入事例をご紹介します。  医療業界でAIの導入が求められる背景 創薬 新薬の開発プロセスを大幅に効率化するためにAIの活用が進んでいます。AIは、膨大な化学データや生物学データを迅速に解析し、効果が期待できる分子を特定するために利用され、臨床試験の成功率を予測したり、副作用のリスクを評価したりするのに貢献します。これにより、研究期間の短縮および新薬の迅速な提供が期待されています。  例えば、AIを活用した創薬分野のスタートアップであるシンセティックゲシュタルトは、 大規模な化合物データを基にAIモデルを構築し、新薬候補を特定しています。特に、ウクライナのEnamine社のデータベースを活用し、従来よりも20倍以上のデータを使用してAIを訓練することで、予測精度を向上させま。さら。さらに、化合物の3次元構造データを考慮することで、化合物発見の可能性を大幅に向上させています。  疾病予測と予防 AIを用いて患者の健康データやライフスタイル情報を解析することで、将来の病気リスクを特定することが可能です。これにより、疾患の早期発見や発症前の予防が可能となります。  例えば、カナダのRetiSpecは、AI技術を使い、眼科検査でアルツハイマー病の早期発見を目指しています。網膜の画像を解析し、認知症の原因とされるアミロイドβの蓄積を予測することで、病気の初期段階での診断を可能にします。この技術により、アルツハイマー病の早期治療や生活の質向上が期待されています。  パーソナライズド・メディシン AIを活用したパーソナライズド・メディシンは、個々の患者の遺伝情報、生活習慣、医療データを分析し、最適な治療法を提供する医療アプローチです。これにより、従来の画一的な治療法に比べて、患者ごとにより効果的で副作用の少ない治療が実現します。AIは膨大なデータを迅速に解析し、個々のニーズに合った治療を提案することで、精度の高い医療をサポートします。  例えば、日立製作所は、ユタ大学およびレーゲンストリーフ研究所と共同で、複数の治療薬を要する2型糖尿病患者向けに、AIを活用した治療薬選択支援システムを開発しました。このシステムは、ユタ州およびインディアナ州の電子カルテデータを統合・分析し、患者の体重や検査値、治療薬などのデータを基に、過去に病態が類似する患者の治療パターンを学習しています。実際に2剤以上の併用治療において検証した結果、83%以上のケースで治療薬の選択を支援可能という結果が得られています。  医療画像解析 X線、CTスキャン、MRIなどの医療画像の解析にAIを用いることでがんや心疾患などの早期発見や診断精度を上させるのに役立ちます。AIは膨大な画像データを学習し、腫瘍や異常な組織を迅速かつ高精度で検出することができ、これにより医師の診断作業を効率化し、人的エラー(見落とし等)を減らすことが可能です。  例えば、エルピクセル株式会社は、胸部X線画像から肺がんが疑われる肺結節を検出するAI医用画像解析ソフト「EIRL Chest Nodule」を提供しています。このソフトは医師の診断支援により、見落とし防止に大きく寄与し、放射線科専門医で9.95%、非専門医で13.1%の感度向上が認められました。継続的な改良により、医療現場での活用が期待されています。  メンタルヘルスケア メンタルヘルスケアにおいて、AIは精神的な健康状態のモニタリングや予防に役立ちます。AIは、患者の言動や生体データを分析してストレスや不安、うつ病の兆候を早期に検知し、個別に適したサポートを提供します。  例えば、エストニアのソフトウェア企業であるShen.AIは、顔認識技術を活用して遠隔で健康状態をチェックできるシステムを提供しており、ラテンアメリカのヘルステック企業VivaWellと提携しています。この技術により、ユーザーはスマートフォンを使って心拍数や呼吸数などのバイタルサインを測定し、医療機関に行かずに自宅で健康状態をモニタリングできます。これにより、予防的なヘルスケアが手軽に実現され、特に医療アクセスが限られた地域での健康管理が向上します。  まとめ 膨大な医療データをAIで解析できるようになったことで、創薬や診断の効率化、個別化医療の実現を促進し、医療現場での診療エラーの低減や精度向上が期待されています。医療業界において、今後ますますAIの導入が促進されると予想されます。  本記事の読者の中で、AIの導入を検討されている企業様がいらっしゃいましたら、是非リッケイにお任せください!株式会社リッケイは、べトナムTop10のICT企業の日本法人であり、グループ全体で1800名以上のエンジニアを擁しています。また、AIに特化した関連子会社も有しており、ChatGPT搭載のロボットや生成AIを活用した人事向け履歴書分析ツールなどを開発しています。お客様のプロジェクトに最適なAI開発人材を迅速に用意可能ですので、お気軽にお問い合わせください。