04/04/2024

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【最新版】企業のAI活用事例5選 

ChatGPTの台頭により、企業におけるAI・生成AIの活用および投資が顕著に加速しています。そして、AIを導入した企業は、業務効率化やコスト削減、安全性の向上、ユーザー体験の向上などの恩恵を享受し始めています。本記事では、さまざまな業界における注目の最新AI活用事例を5つご紹介します。  AIを活用した森林調査 – 日立システムズ 日立システムズは、ドローンとAI解析ソフトウエアを駆使することで、森林調査の効率化に成功しています。従来、人の手による森林調査は19日もの日数を要していましたが、ドローンおよびAI技術の活用により、作業期間を4日程と8割短縮しました。  具体的には、ドローンでの写真測量とLiDAR測量により収集したデータをAIが解析し、樹種の識別や樹木の体積を推定します。同社は、宮城県牡鹿郡女川町の町有林での実証実験を実施したところ、森林内の樹種構成が以前とは異なることが明らかになり、それまでスギだと思われていた場所にヒノキやアカマツ、広葉樹が混在していることが判明しました。  この結果は、森林経営計画の見直しや詳細化に大いに貢献するだけでなく、森林調査の労力やコストを大幅に削減しながら、安全かつ迅速に行うことを可能にします。  森林の分析結果 (出所:日立システムズ) AIを活用した創薬 – シンセティックゲシュタルト シンセティックゲシュタルトは、AI創薬に取り組むスタートアップです。同社は大規模な化合物データベースを活用し、新薬開発に必要な低分子化合物を発見するためのAIモデルを開発しています。  具体的には、ウクライナのビルディングブロック化合物・スクリーニング用化合物・統合創薬サービスの世界的プロバイダーであるEnamine社が持つ化合物データベースを利用し、従来の方法と比較して20倍以上のデータ量でAIモデルを学習させることで、その性能を大幅に高めることに成功しました。  彼らのアプローチは、競合他社が主に利用している2次元のグラフ構造情報だけではなく、化合物の3次元構造データも考慮に入れることで、予測精度を向上させています。  初期段階では約4000万種類の化合物を学習に用いていましたが、将来的には約10億種類の化合物を選んで学習させる計画です。これにより、新薬候補となる化合物の発見可能性が高まります。  SyntheticGestaltは、新薬につながる化合物の発見に向けたAIモデルを手掛ける。(出所:SyntheticGestalt) 生成AIを活用した肌診断アプリ – ロレアル 世界最大級の化粧品会社であるロレアルは、「ビューティーテック」の分野でリーダーになることを掲げています。同社は、美容業界におけるAI活用の先駆者であり、世界最大のテクノロジー見本市「CES 2024」で生成AIとメタバース技術への投資を進めていることを明らかにしました。  同社は、これまでに蓄積した10ペタバイトの美容データを基に、生成AIを活用した美容アドバイスツール「BeautyGenius」を開発しました。BeautyGeniusの開発には、10種類以上の大規模言語モデルと15万点以上の画像データが活用されており、 ユーザーの肌の状態や美容に関する悩みを解決するための個別化されたアドバイスを提供することができます。  例えば、長時間のフライトで乾燥した肌にはアイクリームの使用を提案し、写真を通じた肌診断で具体的なスキンケアアドバイスも行います。また、特別な日のメークアップの相談にも応じ、メークの完成イメージや推奨化粧品を提案する能力を持っています。  このように、ロレアルは、美容とデジタルを融合し、新たな顧客体験を実現することで競争力を高めています。  ロレアル研究・技術担当副最高経営責任者のバーバラ・ラヴェルノス。(出所:Getty Images) 生成AIを活用したショッピング – ウォルマート 世界最大の小売企業として知られるウォルマートは、ラスベガスで開催されたCESカンファレンスで、ユーザーが欲しい商品を素早く検索し、頻繁に注文する商品の再注文プロセスを自動化する2つの生成AI搭載ツールを発表しました。  生成AI検索ツールは、マイクロソフトのAIモデルとウォルマートの買い物客データを組み合わせることで開発され、買い物客がブランド名や品目ではなく特定のユースケースを使用して商品を検索できるようにします。  例えば、友人複数人とフットボールの試合観戦をするために買い出しをするとき、これまではコーラ、ポテトチップス、タオル、ユニフォームなど商品名を個別で検索する必要がありました。一方で、ウォルマートが発表した検索ツールでは、「友人とフットボールの試合観戦」と入力することで、試合観戦に必要な厳選された商品リストを受け取ることができるようになりました。  同社は、カンファレンスの中で、「Walmart InHome Replenishment」と呼ばれる別のAIツールを開発中であると発表しました。このツールは、サブスクリプションベースのInHome配達サービスを利用する買い物客が、よく注文する商品をオンラインショッピングカートに素早く補充できるようにサポートします。  このように、ウォルマートは、ショッピングツールにAIを導入することで、ユーザーのショッピングに要する時間を削減することで、ユーザー体験を向上しています。  ウォルマート、Microsoftとの連携で生成AI活用 (出所:ledge.ai) AIを活用した踏切滞留監視システム – 南海電気鉄道 南海電気鉄道株式会社は、2024年3月11日に、AIを用いた踏切異常検知システムの導入試験を開始すると発表しました。このシステムは、踏切内に滞留している「人」を検知することで、安全・安定輸送の維持及び踏切の安全性向上を目指します。  南海電気鉄道株式会社がAIを用いた踏切異常検知システムの導入試験を始める背景には、踏切事故を未然に防ぐことによる安全対策の必要性があります。踏切は線路と道路が交差する場所であり、人が渡りきれずに列車と接触する危険性があります。  踏切事故が発生すると、列車の運休や遅延が発生し、他の多くの利用者にも影響を及ぼします。2022年度における列車の運休や遅延(30分以上)の件数を見ると、踏切事故が約30%(11件/36件)を占めており、これは大きな割合です。  今回試験導入を開始する新たな踏切異常検知システムは、遮断棒が下りた後に、AIによる画像処理によって人の滞留を検知すると、特殊信号発光機を動作させて運転士に迅速に異常を知らせます。   さらに、既に設置されている監視カメラを使用するため、容易かつ安価に導入できる点が特徴です。南海電気鉄道株式会社は、導入試験の結果を踏まえ、2024年度以降の本格導入を目指しています。  (出所:南海電気鉄道株式会社) まとめ 本記事では、様々な業界における最新のAI活用動向をご紹介しました。企業は、AIおよび生成AIを導入することで、従来のプロセスを効率化したり、安全性を向上させたり、ユーザー体験を向上させたりしています。AIの活用方法は企業によってさまざまであり、今後も次から次へと新たな活用法が生まれてくることでしょう。このAI時代において競争力を維持し、高めていくためにも、企業は既存のビジネスにどのようにAIを適用できるかを検討する必要があります。   株式会社リッケイは、1,000件以上のプロジェクトを通じ、日本のお客様からの信頼を積み重ねるオフショア開発企業です。グループ全体で1500名以上のエンジニアを擁し、 AIに特化した関連会社Rikkei AIも有しており、多数のAI/生成AI開発実績があります。日本の企業様向けにAIコンサルティングからAI開発、AI導入支援まで提供可能です。「AIをビジネスプロセスにどのように取り入れることができるのか相談したい」など、お気軽にお問い合わせください。 

25/01/2024

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Rikkeisoft CEO Interview: ベトナムのAI開発最前線 – 日本企業との技術協力の新たな可能性 

ベトナムは、急速に成長するAI開発のハブとして国際的に注目されています。若くて優秀な人材の豊富さ、勤勉な国民性、諸外国との良好な関係が、ベトナムをAIの新たなフロンティアに押し上げています。本記事では、現Rikkeisoft CEOであり、元Rikkei AI CEOのDang Thai Hoa氏へのインタビューを通じて、ベトナムのAI開発の現状と、日本市場におけるその可能性と影響を深掘りしていきます。  1. ベトナムにおけるAI活用の現状 まず、ベトナム国内での生成AIの活用状況について教えてください。 Hoa氏: ベトナムでは、個人によるChatGPTの使用が日本と同じくらい多いですが、大半はまだ個人的な趣味の範囲内に留まっています。企業においては、データセキュリティの観点から、AIの導入に慎重で、多くの企業で検討中の段階です。  ChatGPT以外で活用されているAI技術にはどのようなものがありますか? Hoa氏: 確かにChatGPTの利用は盛んですが、最も利用されているのはMidjourneyなどの画像生成AIです。これらは特にマーケティングの分野で活用されています。  最近のトレンドとしては、QRコード生成に画像生成AIを使用することがあります。白黒のものではなく、企業のロゴや関連するマーケティング画像を組み込んだQRコードが多く見られます。これらはスマートフォンで簡単に読み取ることができ、従来のシンプルな白黒QRコードよりも企業のブランディングに効果的であるため、注目されています。  ベトナムの伝統衣装アオザイを着用した女性のQRコード  2. ベトナムにおけるAI技術の現状と展望 AI業界の最新動向におけるベトナムの位置づけを教えてください。 Hoa氏: 研究という観点で言えば、アメリカや日本の方が進んでいると言えるでしょう。一方で、ベトナムはそれらの研究をもとに社会に実装するためのリソースが多い点が特徴だと考えます。研究は重要ですが、実際に研究内容をソリューションやプロダクトに具現化する開発部分を担うことができる点がベトナムの強みと言えます。  そのようなプロダクトを具現化する技術力の高さの他に、ベトナムの強みは何がありますか? Hoa氏: ベトナムの強みは若くて優秀な人が多い点です。今後AIのニーズは増え続けますが、日本やアメリカは高齢化が進んでいきます。そんなときに若年層のボリュームがあるベトナムが求められると思います。若いというのは良い点も悪い点もあります。デメリットとしては、経験が浅い人が多いという点があげられますが、若い分学習スピードが早く、すぐに即戦力になります。   また、ベトナムの親は子供が小さい頃から英語、日本語、韓国語、中国語などの言語学習に力を入れます。そのため、ベトナムの方は、外国の方と一緒に仕事をするハードルが低く、この点も強みだと言えます。  さらに、アメリカ、日本、中国、韓国などの大国との関係が良好である点もメリットと言えます。例えば、アメリカはベトナムに多額の投資を行っていますし、ベトナム企業もアメリカに進出し始めています。実際に、RikkeisoftもアメリカにRKTechという子会社があります。このように、諸外国との関係が良好で安定しているから、システム開発の発注やパートナーシップの拡大がしやすい国なのではないかと思います。  AI開発において、ベトナムが他のオフショア開発国より優れている点を教えてください。 Hoa氏: 確かに、ほかにもオフショア開発先としての候補はありますが、国によって特徴が異なります。例えば、インドだと、英語が話せる人が多く、アメリカに住んでいる人も多いため、コミュニケーションという点では、ベトナムより優れています。  一方で、ベトナムの人々は「柔軟性(flexibility)」がある点が強みだと思います。どのような環境や仕事でも、すぐに慣れて柔軟に対応することができます。日本企業にとってのメリットは、コストが削減できたり、ITリソース不足が解消できたりする点があげられますが、その他にも2時間とあまり時差がない点や日本とベトナムの文化が近い点も魅力だと思います。  ベトナム企業とAI開発をするうえで注意すべき点はありますか? Hoa氏: まず、ベトナムと日本とでは仕事のやり方やマインドセットが異なるという点に注意すべきです。例えば、ベトナム人はあまり時間を守らないというイメージがあると思います。Rikkeiのメンバーは、MTGなどの時間をきちんと守りますが、プライベートでの友達との約束では、遅刻することもよくあります。  日々の業務においても、一般的には日本人ほど真剣に取り組んでいない人も多いです。このように日本とベトナムの間では、共通認識やマインドセットに違いがあるため、お互いの文化やワークスタイルを理解して、お互いが納得のいく環境や仕事の進め方を共に探っていくといいのではないでしょうか。  3. AI開発パートナーとしてのRikkeisoft RikkeisoftのこれまでのAI開発実績を教えてください。 Hoa氏: Rikkeisoftは、これまで画像認識と音声認識のプロジェクトをメインに手掛けてきましたが、直近では画像認識と生成AIのプロジェクトが多いです。案件はいろいろありますが、例えばレストランのタブレット注文にチャットボットを導入し、注文の個別化を実現するというプロジェクトに取り組んでいます。  具体的には、チャットボットに「今日はどのような料理がおすすめですか?」や「私にはどのような料理が合うと思いますか?」などと尋ねることで、ユーザーに最適な食事をレコメンドしてくれます。  また、タブレットのカメラ機能を通じて、ユーザーの顔を認識することで、ユーザーの過去の食事履歴を分析したり、ユーザーのフィードバックをデータベースに保存したりすることができます。それらの個人データをもとに、よりよいサービスの提供や個別化されたレコメンドを実現することができます。さらに、ユーザーのアレルギー情報なども取り込めば、事故を減らすことにもつながります。  現在、Rikkeisoftが最も注力しているAI製品は何ですか? Hoa氏: 現在、Rikkeisoftは、生成AI搭載の受付ロボットの開発に注力しています。昔のチャットボットは、振る舞いがどこか不自然で人間らしくありませんでしたが、ChatGPT登場以来かなり自然な会話が可能になりました。何を質問しても回答することができ、利便性がかなりあがりました。5年後には生成AIが搭載されたロボットが世の中に溢れるようになっているのではないかと予想しています。  RikkeisoftのAI開発チームの特徴を教えてください。 Hoa氏: RikkeisoftのAIチームはかなり優秀です。全員ベトナムトップの大学の成績上位者ばかりです。彼らは若く、未経験の方も多いのですが、勉強のスピードがとにかく速く、熱心です。AIのエンジニアは、高度な知識やスキルが求められますが、Rikkeisoftにはそれらを兼ね備えた人材がそろっています。  Rikkeiが日本のお客様と取引をするうえで、気を付けている点や大事にしている点はありますか? Hoa氏: 私たちが一番大事にしているのは、日本企業では必要不可欠な「ホウレンソウ」文化です。  弊社は、オフショア企業ということもあり、日本側とベトナム側のコミュニケーションは頻繁かつリモートで行われます。同じ国の人同士でもリモートだと齟齬が生まれますが、国が変われば、意思疎通はより困難になります。そのため、「ホウレンソウ」文化を根付かそうと努めています。  Rikkeiでは、リーダーやPM、PQA(プロセスをチェックするチーム)向けのトレーニングプログラムが豊富に用意されています。その中には、「ホウレンソウ」に関するプログラムも含まれていますが、これらのプログラムを通じて最初からベトナムチームにその文化を根付かせることで、日本の企業とのやりとりにおける問題の発生を予防するようにしています。  その他にも、日本のパートナー企業から、指摘された部分に関しては、すぐに学び、改善するようにしています。次に、その内容を社内のトレーニングに取り入れることで、意識をどんどん高め、日本人に合わせていくような文化がRikkeiにはあります。     AI開発パートナーとして、 […]

30/11/2023

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企業がAIを導入するメリットとは?知っておくべきリスクも紹介

ChatGPTの登場を皮切りに、世界中の企業で業界・職種問わずAI(人工知能)の活用が進んでいます。 AI(人工知能)の導入は、ビジネスプロセスの効率化、コスト削減など、企業に多くのメリットをもたらす一方で、使い方によってはリスクも孕んでいます。そこで、本記事では、企業がAI(人工知能)を導入するメリットやリスクとその対策についてわかりやすく解説します。 1. AI(人工知能)とは? 厳密には、明確なAIの定義は存在しませんが、 本記事では、AI(人工知能)とは、「ものごとを人間のように捉え、思考し、特定の処理をするようにトレーニングされたシステム」と定義します。 例えば、人間は、過去にりんごを見たことがあれば、目の前の赤くて丸くて少し光沢がある果物をがりんごと判断できるでしょう。同じように、りんごに関する膨大なデータを与え、ある物体をりんごであるのかを判断できるようにトレーニングされたシステムをAIと呼びます。 これは、多種多様なAIの一例にすぎませんが、AIとは何か、少しイメージできたのではないでしょうか。 AIの定義や関連用語、できることなど、詳細に知りたい方は以下の記事をご参照ください。 【関連記事】AI(人工知能)とは?定義、知っておくべき用語、できること 2. AI(人工知能)を導入するメリット 人手不足の解消&若手の効率的な育成 日本商工会議所が2022年に実施した調査では、中小企業の64.9%が「人手不足である」と回答しました。AIやRPAを導入することは、人間が行っていた定型業務を自動化・代替でき、日本の深刻な人手不足の解消につながります。 また、AIの導入は若手を一日でも早く一人前に育て上げるのにも役立ちます。社内規則やベテラン社員のノウハウをAIチャットボットに学習させれば、いつでも若手の疑問点を解決し、独り立ちをサポートしてくれます。 ビジネスプロセス効率化&売上向上 AIの導入は、企業のあらゆる業務プロセスを効率化し、売上の向上に貢献します。例えば、カスタマーサービス部門にAIチャットボットを導入することで、人間に代わって、顧客の疑問やクレームに24時間365日自動対応してくれます。これにより、カスタマーサービス担当者の負担が減らせるだけでなく、顧客満足度向上によって売上機会の増加にもつながります。 安全性の向上 自動車業界や製造業、医療業界などの特定の業界において、AIを導入することで人的なエラーの低減および安全性の向上が期待できます。実際に、自動車業界では、AIを活用した自動運転の方が人間による運転より事故率が低いことがデータから明らかになっています。GM(ゼネラルモーターズ)傘下のCruiseの調査によると、自動運転は、人間のドライバーと比較すると、事故件数は65%減、けがを伴う事故に限っては74%減であり、高い安全性が確認されています。 ビッグデータ解析および活用 企業は、市場動向や顧客の個人情報、購買履歴、売上、在庫、従業員のパフォーマンスなど、日々多くの情報を収集・蓄積しています。それらのビッグデータは活用してこそ意味があります。膨大なデータをAIによって分析することで、近い将来における市場のトレンドや顧客の趣向パターンを推測できます。これらの傾向に基づいて戦略を立てれば、社内リソースを有効活用できるだけでなく、ユーザーにカスタマイズされたサービスの提供が可能になります。 AI(人工知能)を導入するデメリットとリスク 導入・維持コストの発生 AIの導入は、中長期的な視点で見れば、コスト削減・業務効率化・生産性向上・競争力強化など、企業に多くのメリットをもたらします。一方で、AIをビジネスに取り込むことは多額なコストが発生することを認識しておかなければなりません。社内でAIシステムの開発・運用・維持する場合、AIに詳しい人材を採用しなければならないでしょう。外部に委託する場合も当然コストが発生します。 AIシステムの導入を検討しているかつ社内にAIに詳しい人材が在籍していない場合、オフショア企業に委託することで開発・運用・維持コストを抑えることができるでしょう。 オフショア開発会社を選定する際のポイントを知りたい方は以下の記事をご参照ください。 【関連記事】失敗しないオフショア開発会社の選び方|開発パートナー選定のステップや比較ポイントを解説  機密情報漏洩のおそれ 企業がAIを導入・活用する場合、個人情報や機密情報の漏洩と隣り合わせであることを認識しなければなりません。日本ディープラーニング協会は、ChatGPTや画像生成AIなどのAIサービスの利用に関するガイドラインを公開し、その中で秘匿性の高い情報は入力は避けるよう呼びかけています。このことから、ユーザーによって入力されたデータがAIの学習材料に利用されている可能性があり、企業の重要な情報の漏洩につながりかねないことが背景にあると推測できます。 機密情報の漏洩への対策として、AIサービスを使用する際に従うべきポリシーの策定および安全な使用方法についての社内トレーニング、従業員のサービスへのアクセス権の管理などが考えられます。 事故などの責任の所在が不明確 AIが搭載されている自動運転車やロボット、ドローンが事故や損害を起こした場合、誰の責任になるのでしょうか。この場合、そのAIの所有者または製造者が責任を負うことになります。ただし、実際には、その事故や損害の責任がAIの所有者にあるのか製造者にあるのか判断するのが難しいケースが多いです。 AIの所有者が責任を負う場合(不法行為責任)、「所有者による損害行為に故意または過失があったこと」「損害が発生したこと」「損害行為と損害に因果関係があったこと」の3点が認められなければなりません。 また、AIの製造者が責任を負う場合(製造物責任)「製造物に欠陥があったこと」「他人に損害を与えたこと」「製造物の欠陥と損害に因果関係があったこと」の3点が認められなければなりません。 この課題に対して企業は、「信頼できる開発パートナーとAIシステムの安全性を徹底的に確保すること」「AIシステムの意思決定プロセスを透明にし、問題発生時に追跡可能にすること」「AIシステムを継続的に監視すること」などの対策を講じる必要があるでしょう。 AIバイアスによる知的活動の衰退 最後に、すでに多くのAIユーザーに起こっているが、認識されづらいリスクをご紹介します。上述したように、AIは企業活動において多くのメリットをもたらします。ただし、特に生成AIを活用する際に、知らず知らずのうちにAIの出力内容がすべて正しいかのように信じてしまい、批判的に物事を見る能力が衰退してしまうリスクがあります。 本来であれば、客観的かつ網羅的な回答を出力してくれることが望ましいですが、AIシステムのトレーニングに使用されているビッグデータには、特定の人間が主観的に選んだものが含まれる場合があります。AIがトレーニングされる時点でバイアスがかかってしまえば、当然出力される内容にもバイアスがかかってしまいます。 AIの導入・活用を検討している企業は、まずこのリスクを認識したうえで、ユーザーとなる従業員には、バイアスがかかっている可能性を説明し、批判的視点を持ちつつ、AIはあくまで人間の補助的な位置づけであることを伝えると良いでしょう。 まとめ 本記事では、企業がAIを導入することで得られるメリットおよびデメリット・リスクについて具体的にご紹介しました。AIを導入することは、人手不足の解消や効率的な若手の育成、ビジネスプロセスの効率化、顧客満足度の向上が期待できる反面、導入・維持コストの発生や機密情報の漏洩、バイアスがかかってしまうなどのデメリット・リスクにも気を付けなければなりません。企業は、このメリットとデメリットを考慮し、AI導入の要否を判断すると良いでしょう。 コストを抑えてAIシステムを開発したいとお考えの企業様は、株式会社リッケイをご検討ください。当社は、ベトナムオフショア企業であり、国内に東京・大阪・名古屋・福岡に拠点を有し、280名のスタッフが在籍しております。AI関連エンジニア数は50名以上在籍しており、日本語による円滑なコミュニケーションが可能です。ビジネスニーズにカスタマイズされたAI開発にご興味のある企業様は、お気軽にお問い合わせください。 当社のAI関連事例はこちら

27/11/2023

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【超入門】AI(人工知能)とは?定義、知っておくべき用語、できること

ChatGPTをはじめ、この1年ほどでAI(人工知能)は私たちにとって身近な存在となりました。質問したことに対して、こちらの意図を汲み取ってそれらしい返答を出力してくれたり、数秒のうちにプロのデザイナーが作成したような画像や動画を出力してくれたり、表や関数の作成をしてくれたり、その用途は多様です。 このように、非常に便利なAI(人工知能)ですが、そもそもAIとは何でしょうか。本記事では、AIを理解するためにその定義や知っておくAI基本用語、AIにできることをわかりやすくご紹介します。 1. AI(人工知能)とは? AI(人工知能)の定義 AIという単語は、「Artificial Intelligence」の略であり、日本では一般的に「人工知能」と訳されます。 AIとは、「人間のようにものごとを認識および思考し、処理をするコンピュータシステム」と本記事では定義します。 例えば、私たち人間が以下の画像を見たとき、過去の経験をもとにこれが「りんご」であると一瞬のうちに判断できます。 AIとは、このように物体を認識して、過去のデータから思考し、何かを判断したり処理したりできるようにトレーニングされたシステムのことを指します。 ※ただし、AIの定義は研究者によって異なり、そもそも「知能」という単語の定義が明確ではないため、「人工知能」の明確な定義が存在しないというのが現状です。 2. 知っておくべきAI用語 ここでは、AIを理解する上で知っておくべき関連用語をご紹介します。 機械学習(ML:Machine Learning) 機械学習とは、特定の対象物や用途に関する大量の学習データから、特徴やパターンを学習し、それに基づいて未知の対象物を自動で処理するシステムのことを指します。機械学習は、人間が対象物に関する正解と不正解のデータセットを与える「教師あり学習」ととにかく対象物のデータを与えてAIに自律的に特徴を学習させる「教師なし学習」に分けられます。 例えば、犬を判断できるAIを開発する場合、教師あり学習では、犬の画像に「正解」ラベルをつけて猫(不正解)や鳥(不正解)の画像とセットで与えて学習させます。一方で、教師なし学習では、ひたすら犬の画像を与えて、AIに犬の特徴(耳が立っている、伸びた鼻と口など)を自律的に学習させます。 深層学習(DL:Deep Learning) 深層学習とは、人間の脳の仕組みを再現した「ニューラルネットワーク」を用いた、より高度な機械学習の1つの手法です。ニューラルネットワークは、「入力層」「隠れ層」「出力層」の3つから構成されており、隠れ層を多層にすることで、より複雑な事象の学習や処理が可能になります。 従来の機械学習で犬と猫を判別できるようなAIを開発しようとした場合、犬と猫のどの特徴(毛の色、耳の形や大きさ、鼻・口の長さ、顔の比率など)に着目して学習すべきかを人間が教える必要がありました。一方で、深層学習では、さまざまな要素を同時に学習できるため、「何に着目して学習すればよいのか」ということを自ら判断できるわけです。 自然言語処理(NLP:Natural Language Processing) 自然言語処理(NLP)とは、人間の言葉(テキストや音声)を分析、抽出、理解し、処理する技術のことです。身近にある自然言語処理(NLP)が使用されている例として、多言語翻訳サービスの「Google翻訳」やスマートアシスタントである「Siri」や「Alexa」などが挙げられます。 生成AI(GenerativeAI) 生成AI(GenerativeAI:ジェネレーティブAI)とは、学習したデータをもとに、独自のコンテンツを生成・創造できるAIのことです。生成AIによって生成されるコンテンツとして、テキスト、音声、画像、動画、音楽などがあります。 生成AIが従来のAIと異なる点は、従来のAIが構造化データ(整理されたデータ)により学習し、特定の処理の自動化しかできなかったのに対し、生成AIは構造化されていないデータを学習し、全く新しいコンテンツが創造できる点にあります。 生成AIは、既にビジネスでも導入されており、ブログ記事やメールの作成、パッケージデザインの提案、カスタマーサービスの自動化など用途はさまざまです。生成AIは今最も注目されている技術であり、今後その活用は拡大の一途をたどると予想されます。 大規模言語モデル(LLM) 大規模言語モデル(LLM)とは、数十億語といった膨大な量のテキストデータによりトレーニングされた自然言語処理モデルのことです。大規模言語モデルは、ChatGPTなどのチャットボットには欠かせない技術であり、テキストの分類や要約、生成、翻訳、質疑応答、感情分析など多岐にわたるタスクを実行します。大規模言語モデルにより、チャットボットなどで出力されたテキストは人間が作成したものと相違ないレベルまで向上しました。 マルチモーダルAI マルチモーダルAIは、ある対象物を複数の異なる入力データ(テキスト、音声、画像、ビデオなど)を関連付けて認識し、処理することができる高度なAIのことです。例えば、感情分析にマルチモーダルAIを応用することで、言葉の内容だけでなく、話し方や表情も同時に分析することができ、より正確な感情を分析できます。 3. AI(人工知能)にできること 画像認識 画像認識は、画像内の人物や物体を認識するAI技術です。画像認識技術はさまざまな業界で、さまざまな用途に利用されています。例えば、ソーシャルメディアでの自動タグ付けや監視カメラの映像から特定人物の検出、MRIなどの医療画像から病変を検出などに役立っています。 言語解析 言語解析は、人間の言葉を理解し、文の構造や意味を分析するAI技術です。言語解析技術を活用することで、感情分析、自動翻訳、音声認識などが行えます。身近なサービスとしてGoogle 翻訳や、Amazon Alexa、AppleのSiriなどがあります。 需要予測 AIは、過去の膨大なデータと機械学習により、将来のある時点の需要を予測することが可能です。例えば、小売業界で在庫管理にAIを導入することで、顧客の購買傾向や季節的な需要の変動を学習し、過剰在庫や在庫不足を防ぐことが可能です。 機械制御 AIは、人間の代わりに機械やシステムの状態を監視し、必要に応じて自動的に調整を行うことができます。この技術は、製造ラインの自動化、自動運転車の運転制御システムなどに応用されています。 レコメンド AIは、ユーザーの行動や好みに基づいて、パーソナライズされた商品やサービスを推薦することができます。例えば、NetflixやTik Tokでは視聴履歴に基づいて映画やショートビデオのレコメンドが行われ、Amazonのショッピングサイトでは購買履歴や閲覧データから関連商品がレコメンドされます。 まとめ 本記事では、AI(人工知能)の定義や知っておくべきAI用語、AIにできることなどの基本情報をご紹介しました。本記事を通して、普段使用しているAIツールのベースとなっている技術について知っていただけたのではないでしょうか。 AIは一過性のトレンドではなく、私たちの私生活、仕事に大きな影響・変化を与えるイノベーションです。株式会社リッケイは、AIに特化した関連会社Rikkei AIを有し、日本の企業様向けにAI開発、導入支援を提供しております。AIをビジネスプロセスにどのように取り入れることができるのか詳しく知りたい企業様は、お気軽にお問い合わせください。 当社のAI関連事例はこちら

11/09/2021

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機械学習におけるデータの重要性 – AI競争で勝つには、良質かつ膨大な学習データが必要

現在、AI(人工知能)は健康、農業、金融、交通などの分野で利用され、その進歩を加速させています。しかし、ある特定の地区や地域を超えてAIを発展させるためには、良質かつ膨大なデータソースが必要です。データの利用促進はは、AIによる分析精度を向上させるための鍵であり、製品やサービスはパターン認識やインサイト生成からより高度な予測技術へと移行し、ひいてはより良い意思決定を実現します。 日本企業がこのAI競争に参加して、最新の技術トレンドを捉えてリードするためには、巨大なデータウェアハウスを構築する必要があります。例えば、FPT、Viettel、VinAI、VNGといったベトナムを代表するテクノロジー企業は、将来のトレンドにアプローチするために、データウェアハウスを構築しています。私たちリッケイソフトもまたベトナムのテクノロジーリーダーの一員として、『Speech to Text』製品用の巨大な音声データウェアハウスを構築し、AI開発競争に参加しています。AI開発におけるデータの役割を多角的に理解していただくために、株式会社Rikkei AI 副社長 グエン・ミン・タン氏にインタビューしました。 AIは1950年代に考案されました。今日までの60年を超えるAI研究の歴史の中で、3回のブームがあったと言われています。第2次ブームまでは「ルールベース」と呼ばれる、人間が予めルールや知識を用意して、それらに基いて機械が判断するシステムが中心でした。 現在は第3次ブームを迎え、機械が自らデータから知識を得る技術「機械学習」が中心となっています。特に、機械学習技術の先端領域である「深層学習(ディープラーニング)」がAI技術の中の鍵となっています。この深層学習の進歩によって、より多くの人が高度な技術にアクセスできるようになった結果、AIが広く認知され、実際に使われるようになりました。 さて、データについてのお話ですが、データは石油ではなく、21世紀の新たなブラックゴールドの源泉であると主張する意見が多くありました。AI製品はさまざまな要素技術の融合であり、データは不可欠な構成要素の一つです。統計によると、80%のAI製品の開発時間は、データ関連の処理に費やされています。AIの育成は、子供の教育に似ています。正しいデータを使って学習させれば、AIはうまく学習することができます。反対に、間違ったデータで教えれば、間違った学習をしてしまいます。不正確なタイミングで異質なデータが使われると、AIは混乱してしまいます。多くのAI向けデータを適切に活用して学習すれば、AIはより賢くなり、より正確に認識できるようになります。 GoogleやMicrosoftなどの大手テクノロジー企業や、自動運転車の開発に取り組むトヨタ、テスラ、ヒュンダイなどの自動車メーカーが、競争で優位に立つためにAI向けデータに多額の投資をしていることは間違いありません。例えば、Googleの音声認識エンジンの学習には、何十万時間の音声データが使われています。同様に、テスラは数百万枚の実写写真を使って自動運転車の学習を行っています。 データラベリングに特化した企業も、AIのトレンドに追随しています。また、より迅速で正確なAIデータラベリング技術も開発されています。その結果、これらのビジネスのスタートアップ企業の多くがユニコーン企業へと成長しています。 ご存知のとおり、リッケイソフトの『Speech To Text』とそのコアテクノロジーは、国会やいくつかの省庁、機関、その他の政府機関に導入されているAI音声認識ソリューションです。AI音声認識技術には幅広い用途がありますが、ベトナムでそれを活用している企業はごくわずかです。Viettel、FPT、VNG、VinGroupなどの大手企業はいずれも重要なプレーヤーです。 では、なぜこのAI競争に参加する企業がまだそれほど少ないのでしょうか。それは、施設や設備インフラ、AI開発者などのリソースに加えて、この技術を活用には大量の音声データが必要になるためです。この音声データを収集し、分類するには多額の投資が必要になります。 したがって、すべての企業が経済的なリスクを許容できるわけではありません。特に、AI技術の習得や製品のアウトプットの実現可能性が不確かな場合にはそうです。 正確なデータ収集と品質管理の難しさ、そしてAIデータのラベル付けにかかるコストは、世界中のどこにおいてもデータを作成する上で最も悩ましい課題と言えます。 リッケイソフトでは、『Speech-To-Text』を開発する時、現実にマッチした音声データソースの発見、内容の多様性、地理的条件、年齢、性別などに苦労しました。一人ひとりの聞き取りや理解能力が異なる場合、データのラベル付けは難しいかもしれません。 特にこの地域の人々は、他の人が話している音声を聞き取り、適切に捉えることが難しいと感じています。 リッケイソフトは、内部データラベリングと新しいサービス開発のニーズを満たすために、プロフェッショナル用のデータラベリングツール『Rikano』を研究開発しました。Rikanoは、世界中の他の多くのラベリングツールの利用法や特徴を参考にして作られました。 Rikanoによって、最も多いデータタイプである画像、音声、テキストなどデータのラベルを付けを容易する同時に、ユーザーが各プロジェクト参加者の進捗状況や作業品質、生産性、作業履歴なども簡単に管理できるようになりました。その結果、Rikanoはリッケイソフトのデータラベリングサービスの開発戦略において重要な役割を果たしています。 企業は、AIがもたらす可能性のあるメリットをより深く理解し、AIへの関心を高めています。その結果、ビジネスの活動に関連するすべてのデータが復元され、AI構築によるオペレーションの最適化を支援することになります。 もう一つのAIのトレンドがAIデータのラベリングを防ぐためのアルゴリズムを作成することです。これは感情的な要素や人間的な要因によってコントロールされる可能性が高い労働集約的な作業です。ただし、これは将来の課題です。

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